I.髄液 |
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1. 髄液 |
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・ 脳室・クモ膜下腔を満たす液
・ 全髄液量 100〜150 ml (脳室内 20〜40 ml、クモ膜下腔 100〜110 ml)
・ 脈絡叢より産生.一部は脳室上皮や神経組織からも産生される
・ 1分間に 0.3〜0.5 ml 産生.1日に4〜5 回入れ替わる
・ 血液・脳関門により血液への物質透過能を有し、逆は制限されている
・ 役割 |
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1) 中枢神経系への衝撃に対する緩衝作用
2) 神経細胞の浸透圧平衡の保持
3) 中枢神経からの分解不要物質の除去 |
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2. 髄液検査が必須の疾患 |
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1) 中枢神経系の炎症性疾患(髄膜炎・脳炎・脊髄炎)
2) クモ膜下出血
3) 白血病やリンパ腫など血液・リンパ系腫瘍の浸潤
4) Guillain-Barre症候群(急性脱髄性多発性根神経炎) |
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原因不明.風邪あるいは胃腸症状で始まる.疼痛を伴って筋脱力が下肢に出現し上肢に及ぶ.顔面神経麻痺や嚥下障害を示すこともある.一般に予後良好.蛋白細胞解離(蛋白量は増加するが細胞数は増えない)が特徴 |
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3. 検査の種類 |
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1)理学的検査 |
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(1)液圧:60〜150 mm H2O 臥位 (2)Queckenstedt試験:陰性 (3)外観:水様透明
(4)比重:1.005〜1.007 |
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2) 細胞学的検査 採取後、速やかに行う |
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(1) 細胞数:5 /μl 以下、新生児 25 /μl 以下、乳児 20 /μl 以下 |
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(細胞数増加を認めた場合、施設で基準を設け、染色標本での細胞種類検査を実施) |
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(2)細胞種類 ギムザ染色標本作製 塗抹後直ちに乾燥させる |
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リンパ球 約75%、単球 約22%、好中球 約2%など.新生児や乳児は組織球や単球の比率が高い
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3)化学的検査 |
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(1)総蛋白:10〜40 mg/dl(ピロガロールレッド法が主流)
(2)グロブリン反応:Pandy反応(−〜±)、Nonne-Apelt反応(−)
(3)蛋白分画
(4)トリプトファン反応:陰性(キサントクロミーを認める検体では偽陽性となる)
(5)ブドウ糖:50〜75 mg/dl(血糖値の約2/3の濃度 細菌性髄膜炎で低値)
(6)Cl:120〜130 mEq/l
(7)LD:8〜50 IU/l (細菌性髄膜炎で高くなる) |
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4)微生物学的検査 |
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細菌検査 主な起因菌:B群溶血性連鎖球菌・大腸菌・リステリア菌・インフルエンザ菌・
肺炎球菌・黄色ブドウ球菌・表皮ブドウ球菌・髄膜炎菌・結核菌
真菌検査 主な真菌:クリプトコッカス・カンジダ・アスペルギルス・ヒストプラズマ
続発性が多い.基礎疾患の有無、免疫抑制剤や副腎皮質ホルモンの使用など |
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5)ウイルス抗体価 |
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エコー4・6・9・30型、コクサッキーA7・A9・B3・B5型、ムンプス、日本脳炎、ポリオ、単純疱疹(ヘルペス)、狂犬病などの各ウイルス |
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II.胸水・腹水・心嚢水 |
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・ |
胸腔・腹腔・心膜腔に貯留する液 |
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・ |
健常人の胸・腹水は各々50 ml以下.心嚢水は10〜30 mlで心臓の動きに対して潤滑剤の役割を担う |
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1. 検査の目的 |
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滲出液と濾出液の鑑別.場合によっては腫瘍細胞の有無 |
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1) |
滲出液:蛋白の透過性亢進(漿膜の炎症、悪性腫瘍の漿膜腔への転移・浸潤) |
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2) |
濾出液:毛細血管内圧の上昇、毛細血管透過性亢進、膠質浸透圧の低下、リンパ管閉塞によるリンパ液の通過障害(鬱血性心不全、肝硬変、バンチ症候群、ネフローゼ症候群など非炎症性疾患)
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2. 検査の種類 |
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1) 理学的検査 |
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(1)外観 色調・清濁・性状(漿液性、粘液性、膿性、血性、乳び性、脂肪性、胆汁性など)
(2)比重 屈折計にて |
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2) 細胞学的検査 |
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(1)細胞数:チュルク液で10倍希釈し、ビュルケル チュルク計算盤で算定
(2)細胞種類:ギムザ染色標本作製 引きガラス法で塗抹後直ちに乾燥させる
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腫瘍細胞の出現頻度が他の材料と比較し高い.反応性中皮細胞との鑑別が重要 |
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3) 化学的検査 |
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(1)リバルタ反応:酢酸添加量や水道水の温度によって反応が左右される |
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酢酸添加混和後、しばらく静置してから検査する |
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(2)蛋白量:蛋白計を用いる.冷蔵庫保存の検体は室温にもどしてから実施
(3)ブドウ糖:意義は少ない
(4)LD:抗凝固剤添加の検体はできる限り使用しない |
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4) 微生物学的検査 |
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3. 検査結果と性状(滲出液と濾出液の鑑別) |
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滲出液 |
濾出液 |
比 重 |
1.018以上 |
1.015以下 |
リ バ ル タ 反 応 |
陽 性 |
陰 性 |
蛋 白 量 |
4 g/dl以上 |
2.5 g/dl 以下 |
穿刺液蛋白/血清蛋白 |
0.5 以上 |
0.5 未満 |
細 胞 数 |
多い(1000/μl以上) |
少ない(1000/μl未満) |
細 胞 種 類 |
多核白血球・リンパ球 |
中皮細胞・組織球 |
L D |
200 U/l 以上 |
200 U/l 未満 |
穿刺液LD/血清LD |
0.6 以上 |
0.6 未満 |
成 分 |
血漿成分に似る |
リンパ液に似る |
フ ィ ブ リ ン |
多 量 |
微 量 |
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III.関節液 |
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・ |
滑膜から分泌される特異タンパクやムチン、血清成分、細胞成分からなる
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・ |
関節の潤滑作用および軟骨への栄養補給の役目をはたす |
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1. 検査の目的 |
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関節疾患の診断補助 |
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2. 検査の種類 |
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1) 外観 色調・清濁・性状 正常関節液は無色透明、炎症時は黄色を帯び混濁
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粘稠性(ヒアルロン酸による)が高いが炎症により低下
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2) ムチン塊テスト
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固くて砕けにくい:健常・変形性関節症・外傷性関節炎
柔らかくて砕けやすい:慢性関節リウマチ・痛風・化膿性関節炎
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3) 細胞学的検査
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(1) |
細胞数:直接、ビュルケル チュルク計算盤に入れて算定 細胞数が多い場合は希釈液(ニューメチレン青を0.5%加えた生理食塩水)で10倍し算定 チュルク液は不可
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(2) |
細胞種類:ギムザ染色標本作製 すり合わせ法で塗抹後直ちに乾燥
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4) |
化学的検査 必要に応じて液状化処理(試料10mlにヒアルロニダーゼ2?を加え、37℃ 5〜10分放置)を行う |
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(1)蛋白(血漿の1/3〜1/4):アルブミンがほとんど 炎症によりグロブリンが増加
(2)ブドウ糖(血糖値とほぼ同じ):炎症により低下
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5)結晶同定 |
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主な結晶: |
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尿酸ナトリウム(MSU)・ピロリン酸カルシウム(CPPD)・ハイドロオキシアパタイト・シュウ酸カルシウム・コレステロール・リン酸カルシウム |
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鋭敏色偏光顕微鏡: |
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尿酸ナトリウム(痛風)とピロリン酸カルシウム(偽痛風)の鑑別
鋭敏色板Z´軸に平行で黄、直角で青(負の複屈折)=尿酸ナトリウム
鋭敏色板Z´軸に平行で青、直角で黄(正の複屈折)=ピロリン酸カルシウム |
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6)微生物学的検査 |
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【補足】 |
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1.気管支肺胞洗浄液(BALF) |
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・び慢性間質性肺疾患を中心に行われる
・肺の1区域に対して100〜250 ml の生理食塩水が使用される
・喫煙者は非喫煙者よりも洗浄液の回収率は低い
・検査項目 |
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細胞学的検査(細胞数・細胞種類・細胞免疫)
細菌学的検査(一般細菌や抗酸菌の培養、染色など)
ウイルス検査(ヘルペス・サイトメガロなど) |
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・細胞数算定 |
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胸・腹水と同様の手技で行う
細胞は変性をきたしやすいため、洗浄後速やかに算定する
喫煙者の方が非喫煙者より細胞が多い |
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・細胞種類 |
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線毛上皮細胞や扁平上皮細胞は無視する
健常者の細胞像:組織球約90%、リンパ球約10%、好中球約1%
組織球(肺胞マクロファージ)の出現は洗浄操作がうまく実施された証拠 |
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2. 連続携行式腹膜透析(CAPD)廃液
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・利点 |
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食事制限が少ない
小児の成長を妨げることが少ない
貧血が発生しにくい
社会的活動の拘束が少ない
心臓・血管系への負担が少ない |
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・問題点 |
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管理を怠ると腹膜炎を併発することがある
糖および脂質代謝異常に陥ることがある(透析液にブドウ糖を含むため)
食欲不振(腹部膨満状態による)や栄養低下になることがある |
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・検査項目 |
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細胞学的検査(細胞数・細胞種類)
細菌学的検査 |
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・細胞数検査 |
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髄液と同様に行う.細胞数が多い場合は胸・腹水の方法に従う
正常時の細胞数:25/μl以下
腹膜炎の診断基準:細胞数100/μl以上、好中球50%以上、細菌の検出 |
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・細胞種類 |
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中皮細胞は強い変性像を伴うため、その鑑別が重要 |
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