千臨技会誌 2011 No.2 通巻112 |
みて見て診よう | 超音波検査をみて,見て,診よう(7) | 成田赤十字病院 浅 野 幸 宏 |
施設紹介 | 国立病院機構千葉医療センター | 福 田 憲 一 |
研究班紹介 | 病理検査研究班 | 静 野 健 一 |
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みて見て診よう! |
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超音波検査をみて,見て,診よう(7) |
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成田赤十字病院 検査部 生理検査課 浅 野 幸 宏, 長谷川 雄 一 |
前回は超音波検査教育について簡単に触れ,その最終目標を急性腹症の患者にも対応できる事としました.その理由の一つとして,当院における超音波検査当直業務があげられます.24時間拘束体制から始まった業務形態は,変遷を経て当直業務に移行し6年が経過しようとしています.腹部,心臓,血管をはじめ様々な臨床側の要求に応えています.業務紹介はさておき,この急性腹症について触れてみたいのですが,限りある紙面なので今回は上腹部領域について書いてみます. ◆急性腹症とは “急性腹症”とは,腹痛を主訴とし急激な発症で始まり,直ちに緊急手術が必要であるか否かを診断しなければならない疾患の総称であるといえる.急性腹症で最初に行われる画像診断は,胸部・腹部単純X線写真と腹部超音波検査である.超音波検査は,多くの疾患で最初に行うべき検査であり,迅速に何度も繰り返し施行でき,患者の苦痛もなく,放射線被爆の問題もない.ただし欠点として,多量の消化管ガス存在下では臓器の描出が困難な場合があること,術者の知識や技量に検査精度が依存していることが挙げられる.今回は,上腹部領域における急性腹症について超音波検査の進め方,読影ポイント等について解説していきます. ◆検査時のポイント 原因疾患による疼痛部位がある程度決まっており,しっかりと理解したうえで検査を施行する.急性腹症での超音波検査において気をつけなくてはいけない事は,一つの異常所見が描出されるとこれに目を奪われ,他の部位の観察がおろそかになりがちなことである.しかし,これでは本質の疾患を見逃してしまう可能性があるため,日頃の検査手順を遵守して腹部全域を走査し,次に問題部位の詳細な観察に戻ることが肝要である.患者の状態によっては,目的部位から積極的にアプローチすることも大切である.重要なのは,限られた時間内に緊急手術の有無を迅速に判別することである.また,初回のみの施行では異常が認められず,経時的観察において初めて診断が可能となる場合もある. ◆観察ポイント1〜9 1.各臓器における炎症所見の有無を確認する (胆嚢炎,膵炎etc.) 2.肝・胆・膵・脾など充実性臓器における臓器損傷の有無 3.腹腔内や後腹膜腔における出血の有無 4.各臓器における腫瘤像の有無 5.各臓器における結石像、石灰化像の有無 (胆石,膵石etc.) 6.拡張像の有無(胆管,膵管etc.) 7.各臓器における膿瘍の有無 8.各臓器周囲における液体貯留の有無 9.腹水の有無 通常検査で体位変換を行う臓器や部位であっても,バイタル維持が何よりも優先されるべきなので, 無理をせず,プローブの入れ方を工夫し,仰臥位のまま検査を行う. {呼吸 指示に従い呼吸を止めることができないときは,患者の呼吸に合わせプローブ操作をするとよい. {腹腔内ガス 汎発性腹膜炎など腸管の動きが悪いときでは,腸内ガスが増加する.さらに飲食後の患者では,胃内 容物とガスのため観察条件が不良となる. 1.原因となり得る対象臓器が多い 腹腔内臓器,後腹膜臓器,心臓・・・ 2.対象臓器が多岐にわたる すべての疾患を経験しているとは限らない 3.身体所見と重症度が必ずしも一致しない 所見を過小評価する可能性がある 4.重症例ほど得られる情報は少ない 病歴が不詳,画像も不良 5.ゆっくり考えている時間的余裕がない 不十分な診断により誤診を招く可能性 ◆疼痛部位と主な疾患 ★胆嚢結石・総胆管結石 胆石は,正常あるいは異常な胆汁成分からなる結晶構造である.胆石の形成は溶解した物質(コレステロールやビリルビン)に対して胆汁安定化物質(胆汁酸やレシチン)の相対的な欠損により生じるとされている.総胆管結石は胆嚢結石の約10%に生じ,一般的には結石の移動によると考えられている.原発性の総胆管結石はまれである. 胆石は一般的に胆嚢内の圧力が上昇するような胆嚢管の閉塞のときに症状が現れる.閉塞が明らかなとき,胆嚢の過度な収縮は典型的な胆道系の疝痛を導き,間歇的な上腹部痛や突然右肩に放散する右季肋部痛を引き起こす. 超音波像 単発・多発の高輝度エコー像(strong echo),音響陰影(acoustic shadow),可動性など. 胆嚢炎 急性胆嚢炎の85〜90%近くが胆石に合併する.逆に胆石患者の10〜20%が胆石を発見されて15年以内に,胆石あるいは胆嚢炎に対する手術を必要とする.発生機序は,その多くが胆石の嵌頓による急性閉塞(頚部・胆嚢管)が契機として起こるものである.無石胆嚢炎は急性胆嚢炎の5〜15%を占め,胆嚢管の機能的閉塞により発症するものと考えられている.衰弱した患者や免疫低下患者に発生しやすい. 超音波像 胆嚢腫大(8揩Rcm以上),壁肥厚(3mm以上),胆泥貯留,嵌頓結石像など. 急性胆嚢炎の85〜90%近くが胆石に合併する.逆に胆石患者の10〜20%が胆石を発見されて15年以内に,胆石あるいは胆嚢炎に対する手術を必要とする.発生機序は,その多くが胆石の嵌頓による急性閉塞(頚部・胆嚢管)が契機として起こるものである.無石胆嚢炎は急性胆嚢炎の5〜15%を占め,胆嚢管の機能的閉塞により発症するものと考えられている.衰弱した患者や免疫低下患者に発生しやすい. 超音波像 胆嚢腫大(8揩Rcm以上),壁肥厚(3mm以上),胆泥貯留,嵌頓結石像など. ★胆管炎 □急性胆管炎 胆管閉塞による胆道内圧上昇部位に,感染を合併した場合にみられる.感染経路は,腸管内からの上行感染が多く,起因菌としては大腸菌が最も多いが多くは複数菌感染である.臨床的には右上腹部痛,黄疸,悪寒を伴う発熱のCharcotの三徴を示す.重篤化すると肝膿瘍,急性閉塞性化膿性胆管炎をきたす. □原発性硬化性胆管炎 胆道系の非感染性,進行性の炎症性疾患であり狭窄や閉塞を導くものである.繰り返す胆道系の閉塞により右上腹部痛,黄疸,急性胆管炎を起こす. 超音波像 拡張,壁肥厚,あるいは胆管の高輝度エコー像は胆管炎の所見である.不規則な胆管の拡張は硬化性胆管炎で認められる. ★肝膿瘍 肝膿瘍は発熱,悪寒,嘔気,嘔吐,食欲不振,体重減少を伴い数週の経過で亜急性に発症することが多い.急性発症は血行性や経胆道的に生じる多発性の肝膿瘍を示唆する.右上腹部痛は症例の約50%で報告されている. {化膿性肝膿瘍:多くはE.coliとenterococciが原因とされている. {アメーバ性膿瘍:Entamoeba histolytica菌体により生じる. 超音波像 内部に液状部分を含む不整形の腫瘤像.液状部分は膿汁の貯留であり,種々の程度に内部エコーを伴っている.この部分が大きければ,後方に音響増強を伴う.
★参考疾患 Fitz-Hugh-Curtis症候群 右上腹部痛を主症状とし,Chlamydia trachomatis等による骨盤内炎症性疾患に肝周囲炎等の限局性腹膜炎を伴ったもの.右上腹部痛を訴える性的活動期の女性では,本症も念頭に置く必要がある. 【Fitz-Hugh-Curtis 症候群(肝周囲炎)】 肝臓前面を中心に肝被膜が厚さ8oと肥厚して認められた.また,子宮周囲から骨盤内に腹水を認め,血清抗体CT(Chlamydia trachomatis)IgG 6.14と高値を呈した. ★脾梗塞 脾動脈の閉塞により,その末梢組織に乏血性壊死がみられる状態である.原因として,治療目的で意図的に脾梗塞を引き起こす脾動脈塞栓術のほか,肝細胞癌の治療で肝動脈塞栓術を施行した際に塞栓物質が誤って脾動脈に流入した場合,さらには細菌感染や,慢性骨髄性白血病などがあげられる. 超音波像 脾の辺縁部に生じやすく,地図状あるいはくさび状の低エコー領域が認められる.梗塞巣が古くなるにつれて,エコー輝度は線維化のために高くなる. ★脾膿瘍 まれであるが,死亡率が高いためこの疾患の診断をつけることはきわめて重要である. 原因は遠隔感染部位からの血行伝播性が多いが,脾梗塞や脾血腫の経過に膿瘍形成を生じることもある.症状は発熱,左上腹部痛,悪寒などであるが,本症に特徴的なものはない. 超音波像 辺縁不整な嚢状エコー,経時的に多彩な変化を呈するが,梗塞,腫瘍,血腫との鑑別は必ずしも容易ではない. ★急性膵炎 膵間質に軽度の浮腫を呈するだけで症状のあまりない軽症例から,重篤な壊死性の過程をたどり,多臓器不全に陥るような重症例までさまざまである.急性膵炎の最も一般的な要因は慢性アルコール中毒と胆石症の2つである.主要症状は腹痛であるが,約半分の患者で認められる典型的な痛みは,上腹部あるいは臍周囲に始まり,背中に放散,ときとして腹部全体に広がるものである.最も有用な検査パラメーターは血清アミラーゼ値で,少なくとも2〜3倍に上昇する. ※血清アミラーゼの上昇のあまりみられないもの,他の検査では急性膵炎であっても超音波上は全く変化を示さないものなど非定形的な症例も存在することも頭に入れておく必要がある. 超音波像 膵臓腫大,内部エコー低下,周囲滲出液貯留,周囲消化管内容停滞像など. 完全あるいは不完全な腸閉塞による多量の腸管ガスのため観察困難な事があり,体位変換を積極的に行い観察する事が重要である. 読影のポイント 臓器輪郭の不整や中断像,臓器・実質内の異常エコー像などを描出できれば診断は確定する. 1.臓器輪郭の不整または中断像 {浅い表在性の裂創では検出できないが,大きな裂創や破裂なら描出できる場合がある. {損傷臓器の周囲に液体が貯留している場合は検出しやすい. {受傷直後では損傷部の異常エコーが識別できない場合もある. 2.臓器実質内の異常エコーの存在 {正常な実質部分は各臓器特有の均一なエコー像を呈するが,損傷部はこれと区別しうる異常エコー像を呈する. {異常エコー像には,正常部と比較してエコーレベルが高いもの(高エコー型),低いもの(低エコー型),高エコー域と低エコー域が混在するもの(混在型)がある. {高エコーは挫滅に伴う組織密度の変化を,また低エコーは損傷部から流出した血液(肝では胆汁も含まれる)をそれぞれ反映していると考えられる. {受傷直後は混在型の異常エコー像を呈する場合が多いが,損傷部のエコーレベルが健常部と区別できないこともある.臓器損傷が疑われる場合は反復して検査を行うことが重要である. {受傷直後で低エコー域が主体の場合は損傷部にactive bleedingがある可能性が高いものであり,注意すべき所見である. {損傷部の異常エコー像は経時的に変化し,当初高エコーであった領域も低エコーから無エコーへと変化していく.しかし,経過観察中に突然無エコー域が増大した場合は,損傷部の再出血が考えられるので注意を要する. ここはおさえる!重要ポイント 損傷臓器が同定できない場合でも,他の異常所見から損傷臓器が推測できる場合がある. 1.腹腔内遊離ガス,後腹膜気腫をみたら・・・ {消化管の損傷部を直接描出することは,大きな壁内血腫等がなければ困難である.しかし,腹腔内遊離ガスや後腹膜気腫を描出できれば消化管の穿孔あるいは破裂と推測できる. {遊離ガスの特徴は多重反射を伴う帯状の高エコーで,体位変換で移動する.単純]線像で検出されない少量のガスでも描出できる場合がある.描出しやすい部位は,腹腔内遊離ガスなら肝前面と胸壁の間,後腹膜気腫なら腎周囲である. 2.腹腔内貯留液をみたら・・・ {肝,脾損傷による出血でもっとも所見の得やすい部位は右肝・腎窩(Morison窩)と脾腎境界である.これらの部位で検出しうる最小出血量は100ml前後といわれている.中等量の出血量ではDouglas窩や左横隔膜下で,大量出血では傍結腸溝や右横隔膜下でも検出しうる.Douglas窩の血液貯留は膀胱が充満していたほうが同定しやすい. {左横隔膜下に大量の血腫を認め,しかも脾が識別できない場合は脾破裂が強く示唆される. {腹腔内出血の超音波像は,受傷直後ならほとんどが無エコー域(エコーフリースペース)として描出される.凝血が始まると,内部エコーが生じ,フィブリン析出による索状ないし網目様のパターンを呈するようになる.さらに時間が経過し溶血を生じると再びエコーレベルは低下し,無エコー域へと変化していく. {超音波検査で出血量の評価も可能である. {血液以外の腹腔内貯留液には腸液,胆汁,尿がある.このうち腸液では腸内容を反映した点状の高エコーが浮遊するのがみられることがある. 鑑別診断として・・・ 治療法を選択するうえで肝被膜下血腫と腹腔内出血,腹腔内出血と後腹膜出血の鑑別が必要となる. 1.肝被膜下血腫と腹腔内出血の鑑別 {肝被膜下血腫では,肝表面に認められる肝被膜エコーがみられない. {腹腔内出血と異なり,体位変換に伴うエコー像の変化が認められないことで鑑別できる. 2.腹腔内出血と後腹膜出血の鑑別 {右側腹部からの走査で,肝と腎の間にある腹膜と腎筋膜(Gerota筋膜)が線状エコーとして描出される.この線状エコーより肝側に液体貯留があれば腹腔内,腎側にあれば後腹膜腔と診断できる. ★“FAST” 腹腔内出血を迅速に検出する目的として,FAST(focused assessment with sonography for trauma)と呼ばれるエコー検査手法が推奨されている.これは決められた4カ所のP領域(pericardial,perihepatic,perisplenic,pelvic)を最低限エコーで検索することにより,腹腔内出血だけでなく心タンポナーデ,血胸の有無を迅速かつ簡便に検出しようとする方法である. {実際には心窩部,右横隔膜下腔,肝周囲,Morison窩,右傍結腸溝,左横隔膜下腔,脾臓周囲,左傍結腸溝,そしてDouglas窩の順で検索を行う. {出血は最少100mlの貯留で同定可能であり,エコー所見は通常無エコー領域として認められるが,経時的に凝血を生じると,索状,網目状の内部エコーを伴ってくる. 【代表的症例】 ◎AGML AGMLの超音波像の特徴は,胃壁の全周性・びまん性の強い肥厚像である.第3層粘膜下層の著明な肥厚像とエコーレベルの低下が認められる.これは,本症の病変の主座が粘膜下層にあるためである.類似疾患に胃アニサキス症があげられるが,AGMLに比べより第3層の肥厚と低エコー化が強いことが多い. (AGML):胃前庭部にドーナツ状の高度な壁肥厚がみられた.第3層粘膜下層は著しく肥厚し,高・低エコーが混在して認められた.胃液流入により胃壁の柔軟な伸展が観察された.
◎十二指腸潰瘍・穿孔 胃潰瘍と同様の所見を呈する.穿孔例では,肥厚した壁内に突き刺さるような線状,帯状高エコーを認め,筋層を越えるUL-Wの深掘れの潰瘍像を呈し肝周囲に多重反射としてfree airがみられる. (十二指腸潰瘍・穿孔):十二指腸球部前壁に低エコー性壁肥厚像と中心に孤状の強い高エコー(白苔エコー)を伴う潰瘍エコーがみられた.左図の側面像では漿膜側を貫く,線状の高エコーが描出され,穿孔が考えられた. (遊離ガス):肝表面には,多重反射をわずかに伴うスポット状の高エコー(free air)が認められた.十二指腸潰瘍穿孔と診断された. ◎イレウス 緊急手術の適応となる絞扼性と単純性の鑑別が重要である. 腸管虚血の有無は,超音波造影剤にて,腸管壁内の血流を評価する方法がある. (絞扼性イレウス):右下腹部にloop状に拡張した小腸が認められた.腸管内容物のto and froはみられず腸管壁は菲薄化し,Kerckring襞は消失していた. おわりに 急性腹症の超音波検査は,救急疾患という特性上,制約された時間の中で効率よく,且つ正確に対応しなければならない.超音波装置の描出能の飛躍的な向上があったからといって一朝一夕でできるものではない.日常より積極的に救急疾患と向き合いこれらの画像について詳細な解析を加え,検者の技量や知識について絶えず研鑚をつまなければならないと考えている. |
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施設紹介 |
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独立行政法人国立病院機構千葉医療センター |
今回の施設訪問は,独立行政法人国立病院機構千葉医療センターを訪ねさせていただきました. 千葉医療センターは,JR千葉駅の近く椿森という地名の,住宅街の中に位置しています.訪問した当日は,東北地方太平洋沖地震からまだ日が経っておらず,また東京電力の計画停電の準備等でお忙しいところを,お邪魔いたしました.建物が免震構造ということで,今回の地震では大きな被害は無かったそうです.
【病院の沿革・概要】 独立行政法人国立病院機構千葉医療センターは,千葉陸軍病院を前身とする国立千葉病院が,平成16年4月1日に名称・機構変更して,現在に至ります.その後新病院への建て替えを行って,平成22年6月1日より,27診療科,病床数455床(一般410床,精神45床)の新病院としてスタートをなさっています.また,エイズ拠点病院,地域がん診療連携拠点病院,病院群輪番制病院(二次)等の診療機能を担っています. 【臨床検査科の概要】 臨床検査科は,臨床検査科長の赤羽先生,診断治療研究室長の永井先生のお2人の病理医,永井臨床検査技師長,土志田副臨床検査技師長を筆頭に,検査技師17名(治験管理室付の非常勤技師1名を含む),非常勤職員2名で構成されているそうです.一般,血液,生化学,免疫,輸血,細菌の検体検査部門は2階,生理検査室は2階,超音波室は1階,病理検査室は手術室に近い3階に位置しています. 運営面において千葉医療センターでは,検体検査部門において「一元管理単価契約方式」にて,検査機器,検査部門システム,試薬,消耗品の調達を行っているそうです.病院と落札業者の間で,検査項目ごとに単価を病院と契約し,その検査実施件数に応じた支払いをするシステムであり,初期投資や減価償却が不要なのが特徴だそうですが,過去の検査件数から単価が計算されるので,検査件数の変動が収支に影響するということです.新病院開院から開始し,もうすぐ1年経つことから,その評価を行っていくということです. また,時間外検査も土日祭日を含めて,1名にて宿直,日直体制を実施されているそうです. 【中央検査室】 病院2階のワンフロアーにて,一般,血液,生化学,免疫,輸血,細菌の各検査を行っていました.一般,血液,生化学,免疫,輸血の各検査を6.5名,細菌検査は1名にて,業務を行っているそうです.年間の検体検査件数は160万件程度だそうです. 各検査部門のシステムは,日本電子社CLALIS,輸血検査はオーソ社BTDX2,細菌検査はシーメンス社のものを使用し,千葉医療センターでは富士通社の電子カルテを採用していることから,輸血の交差試験結果などの特殊なものを除き,結果はオンラインにて参照できるそうです.搬送ラインなどは導入されていませんが,採血室が廊下を挟んだ近い場所にあり,採血後おおよそ40〜50分程度で検査結果を報告できる体制だそうです. 輸血検査もオーソ社 オートビューInnovaの導入により自動化し,製剤管理,発注,自己血管理等の業務も行われています.年間血液型検査依頼件数3,300件,不規則性抗体検査2,900件,血液廃棄率は赤血球製剤2.34,FFP1.29,PC 0だそうです.また,輸血管理料1の基準をクリアなさっているということです. 主な使用機器:検体前処理システム LabFLEX2500(アロカ),生化学自動分析器 BM-6050 2台(日本電子),免疫測定装置 ルミパルスPrestoU(富士レビオ),ARCHITECT i2000(アボット),グルコースA1C測定システム ADAMライン(アークレイ),尿検査装置 AX-4030,IQ-5210(アークレイ),血液検査システム XE-Alpha(シスメックス),血液凝固測定装置 CS-2000i(シスメックス),全自動輸血検査システム オートビューInnova(オーソ),全自動血液培養システム バックテックFX(ベクトン),同定薬剤感受性パネル自動測定装置 マイクロスキャンWalkAway(シーメンス)
【採血室】 検体検査室と廊下を挟んで,近くに位置していました.外来患者さんの点滴治療等をする処置室が隣接しており,看護師と協力しながら,午前8時から受付を開始し,8時15分から採血を行っているそうです.患者さんの混み具合で技師の派遣人数を調整しているそうで,受付を担当していただいている非常勤職員の方以外に,1名から朝の混雑時には最大4名まで派遣するそうです.採血は担当業務に関係なく,検査科全員で行っているということでした.また,翌日採血予定の病棟採血の採血管の作成も,実施されていました. 採血件数は3,600件/月程度で,そのうち技師は7割程度の採血を行っているそうです. 主な使用機器:採血管準備装置 BC ROBO-686/T1401 12管種(テクノメディカ),ハルンカップラベラー HARN-710(テクノメディカ)
【生理検査部門】 生理検査部門は5名(非常勤1名含む)にて,業務を行っているそうです.検査室の配置が,2階の生理検査室(心電図関係,呼吸機能,脳波・筋電図検査など)と,超音波室が救急外来に近い場所ということで1階と離れていることから,人員配置にご苦労されているということでした. 生理検査室のシステムは,日本光電社Prime Vita,超音波検査は富士通社の電子カルテのレポート作成機能を使用して,オンラインにて作成,参照できるそうです. 超音波検査は,腹部,心臓,血管,乳腺等の領域の検査を,各科の医師と協力して行っているそうです.また,超音波検査士の資格を有している方が5名いらして,また複数領域の資格を有していらっしゃる方もおられるということです.ただし,超音波検査室実施数の内,技師実施件数が40%弱ということで,消化器領域を中心に技師の実施率を上げていきたいということでした. 主な使用機器:心電計 ECG-1400(日本光電),肺機能測定装置 CHESTAC-33(チェスト),運動負荷試験システム Q-STRESS(日本光電),デジタル脳波計 EEG-1218(日本光電),筋電図・誘発電位装置 MEB-2312(日本光電),超音波診断装置 SSA-790A,SSA-370A,SSA-770A(東芝),ProSond (アロカ)
【病理検査部門】 3階の手術室に隣接した場所に位置しています.病理医2名,検査技師3名で業務を行われ,細胞検査士の資格も3名(うち1名は一般検査を担当)有しているそうです.病院3階の広い窓に面し,有機溶媒の排気を考えたチャンバー等も設置されていました.また,手術室に隣接しているということから,手術室の清潔区域内に出向いて,直接摘出された臓器を受け取る事もあるということでした.病理検査システムとして,パシフィックコンサルティング社 Cytopathを使用されています.年間約3,500臓器,術中迅速検査258件,細胞診検査5,700件の業務を実施されているそうです.
【診療支援等】 外来採血業務のほかにも,院内感染対策チーム(ICT)へ細菌検査担当者が,栄養サポートチーム(NST)へ生化学検査担当者が参画して,ラウンド等に参加しているそうです. また,全国的にめずらしい取り組みとして,臨床研究部治験管理室に,毎日午後,血液検査担当の山ア技師(前千臨技理事)を派遣しているそうです.臨床検査技師としての専門性を最大限に活かしながら,検査データの整理,検査値の変動や異常値の報告,時には患者さんへの説明などの業務を行っているそうです. 【今後の取り組み】 超音波検査の充実,お手軽ドックの導入,検査相談室の設置,ISO15189取得に向けた取り組みをあげておられました. 今回,東北地方太平洋沖地震からあまり日が経っていない時に,訪問を受けていただいて,ありがとうございます.計画停電実施の不確実な情報の中,訪問させていただきました.今回,お世話になりました永井臨床検査技師長は,千葉医療センターでの業務以外にも,独立行政法人国立病院機構・関東信越ブロック事務所・統括部医療課の業務に携わっておられて,毎週水曜日は東京にあるブロック事務所で業務をなさったり,今回の地震後も被害の報告のある関東信越の国立病院機構関連病院に,行かれることがあるということでした. お忙しいなか,訪問を受けてくださいました,国立病院機構千葉医療センターの皆様,ありがとうございました. (福田 憲一,佐藤 洋子,平田 哲士)
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