第九回
  第五の習慣「理解してから理解される」
企 画 社団法人千葉県臨床検査技師会
協 力
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
HRDソリューションBU コヴィーグループ

一番努力しなければならないのは、話し手ではなく聞き手である ‐Stephen R. Covey‐

第四の習慣「Win−Winを考える」は、人間関係における心構えを示したものです。更にそれを実行に移すにはお互いのWin(欲しい結果)が何なのかを知る必要があります。そこで大きな鍵を握るのが相互コミュニケーションです。私達が抱える問題のほとんどはコミュニケーションに起因するものではないでしょうか?そしてそれを解決するための第一歩は、やはりコミュニケーションなのです。

私達のコミュニケーションスタイルには図1のようなものがあります。
1. 無視する
一応、これもコミュニケーション手段の一つ!?。
2. 聞くフリをする
聞いている、ようではある。
「で、どう思う?」と聞かれたら「えっ、何だっけ?」と。
3. 選択的に聞く
聞き手は自分が興味のある話題になると、急に口をはさみ、勢いよく話し始める。
4. 注意して聞く
話し手に「ふーん、それで・・・」と相槌を打ちながら内容を聞く。
5. 感情移入の傾聴
聞き手は言葉のみならず相手の表情や感情も受け止めて聴き入る。

 1〜4は聞く側が主役で、自分の枠組みで会話に臨み、聞いています。この場合の“聞く”は、門構えの中に耳が小さく縮こまっていて、充分に聞くことが出来ません。ところが私達のコミュニケーションのほとんどが、1〜4のいずれかなのです。それは無意識に会話の主導権を握ろうとしているからです。会話をコントロールすることで、手っ取り早く結論を出すことも可能だからです。ましてや時間に追われ、忙しく動き回っている人ほど答えが早く欲しいものです。更にプレッシャーがかかった重い問題を抱えている時ほど答えを早く見つけて解決したくなります。

 では、5はどうでしょうか?5は話す側が主役です。聞き手は目と耳と心で相手を理解しようとします。言葉だけでなく、その人の表情や仕種まで深く読み取り、感情までも含めて、相手を受け入れようとする態度です。本当に相手を理解したいのならば、言葉以外にも神経を集中しなければなりません。5は時間がかかります。でも、本当の問題を把握しないままどんなに素晴らしいアドバイスをしても意味がありません。

 南カリフォルニア大学のアルバート・メラビアン教授はコミュニケーションの割合を図2のように分析しています。コミュニケーションにおける言葉の割合はたった7%に過ぎないとのことです。そして音声の特徴などが38%、顔の表情などが55%。つまりノンバーバル(非言語)の部分が大半を占めているのです。

 私達は学校教育においても社会に出てからも、コミュニケーションの手段として何らかの教育はたくさん受けてきました。それは書く、話す、読む、キーボードを打つ?などです。これらは自分の意見を伝える手段としてとても大切なスキルです。しかし、聞くためのトレーニングはあまり受けてこなかったのではないでしょうか?私達は閉じない二つの耳を持ちながら、閉じられる一つの口が先行し、とにかく自分を理解してもらおうと意識を集中してきました。

人の心の扉は、内側からしか開かない
 人の心の欲求が満たされる究極の場面は「自分を理解してもらえた」「心が開放された」と実感できる状態です。聴いてもらえた心の充足感は、次は相手のことも聴いて理解してあげよう・・・、と心にも余裕が生まれます。

 社会生活の中や日常業務の場面では「訊く」ことが多いようです。仕事の指示、確認、報告の場面は、業務をスムーズに運ばせるための「訊く」も必要ではありますが・・・。でも重要な局面こそ、じっくり構えて「理解してから理解される」精神で臨まなければなりません。でもその前に、第四の習慣「Win-Winを考える」を念頭においてください。自分のWinだけを考えている人は相手を理解することは出来ませんから・・・。

 あっ、お医者様は典型的な例です。患者さんの状態を理解し(正しく診断し)そして処方して下さっています。問題解決は「理解してから理解される」ことから始まります。

【私が最近感じること】
 コミュニケーションをとる手段も最近は豊富になりましたね。ケータイやパソコンなどの技術革新により、時間や場所を越えたコミュニケーションも可能になりました。でもバーチャルな空間でのやり取りなので、人の肌を感じ、触れ合う機会がめっきり減りました。だから相手との距離をどのように置いたらいいのか、あるいは相手の感情をどのように受け止めたらいいのか、更に自分の感情をどのように表現したらいいのか、解らなくなっている人が多いようです。機械を操る人間が機械に操られて、人間らしい感性を磨き高める機会がめっきり減ってしまっています。技術革新により生活は便利になりますが機械に操られる人間と化し、心に温度がない人ばかり増えたら、どんな世の中になっちゃうでしょうか?

 そう言う私も、ケータイ二つ持って連絡し合い、MD聞きながら電車に乗り、街を歩く、そんな生活しているんですが(^_^ゞ)

  -------この内容は、フランクリン・コヴィー・ジャパン「7つの習慣」トレーニングプログラムに基づいて表現しています-------


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