直接グラム染色鏡検所見の臨床細菌学的な重要性
―染色所見から起炎菌診断が可能となった3症例を中心として―
○澤田恭子 大楠清文 高橋亮 田口和子
(千葉県こども病院検査科)
【はじめに】
グラム染色は, 迅速性に優れ,
最も基本的かつ重要な検査法である。 検体の品質管理, 菌の起炎性の判断などの面でも有用である。さらに, 今回, 培養検査の一環としての重要性を再認識させられた症例を経験したので報告する。
【症例1】Haemophilus parainfluenzaeによる
尿路感染症(UTI);8ヵ月,
男児.
【症例2】Clostridium butyricum関与の新生児
壊死性腸炎(NEC);日齢3, 女児.
【症例3】百日咳;5ヵ月, 男児.
【考察】
UTIではグラム陰性腸内細菌や腸球菌が起炎菌であることが多いため,
当院では尿をBTB培地に5μl接種し, 沈渣のグラム染色所見により追加培地を選択している。 症例1では, 鏡検所見がなければ起炎菌診断し得なかった。
新生児の便培養ではGBSやMRSA, 胃腸炎起炎菌の検索が主体である。 しかし, NECの発症にはクロストリジウムの関与が報告されており, グラム染色の所見によっては嫌気培養を追加する必要がある。
症例3ではグラム染色所見でH.influenzae様のグラム陰性短桿菌が多数認められたが, 翌日発育は認められなかった。 従って, 著明な白血球,リンパ球の増多からも百日咳が疑われ, ボルデ・ジャング培地を追加し起炎菌診断が可能となった。
百日咳では, 通常, 鼻咽腔粘液を検査材料とするが, 当院では喀痰から分離されることも稀ではない。 ワクチン未接種児では, 百日咳も考慮に入れた検査体制が重要である。
【まとめ】
グラム染色は, その所見に基づいた検査を展開することにより, 検査の精度および効率性向上において,
極めて有用な方法と考えられる。
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