第37回関東甲信地区医学検査学会 2000.10.14-15

当センターにおける薬毒物分析の現状

 

○三上昌章 小笠原英樹 佐藤正一 丸孝夫(千葉県救急医療センタ−)

 

【はじめに】

毒劇物による中毒事件が多発したことにより厚生省は平成10年度に全国の高度救命救急センタ−に分析機器を配備した。当センタ−にはGCMSICPS、キャピラリ−電気泳動、蛍光X線分析装置が新たに加わった。今回、当センターにおけるこれら分析機器を用いた薬毒物分析の現状について報告する。

 

【運用】

当センターでの薬毒物分析体制は、以前から検査科と薬剤部で協力して実施しており、各種薬物濃度測定及び高速液体クロマトグラム(HPLC)による分析を行ってきた。薬物中毒疑いの患者が来院した場合、血清、尿、胃洗浄液などの検体が分析用に提出される。これらの検体は、はじめにTriageなどの簡易同定キットを使用し、大まかな中毒原因物質を推定する。その後HPLCで詳細な分析を行う。この分析結果が出た時点で臨床医に中間報告書を提出している。さらに、検体をGCMS等で分析し、全ての分析結果をまとめ最終報告書を提出している。報告までにかかる時間は、中間報告まで概ね45分、最終報告までに2日から1週間である。

 

【まとめ】

今回の機器導入により、これまで意識障害や中毒疑いとして片付けられてきた症例が、TriageHPLCによる迅速なスクリ−ニング検査、GCMSなどによる正確な同定によって、中毒であると判明することが多くなった。問題点としては、GCMSICPSでは、操作・解析が複雑であり24時間対応が不可能であること、また現在担当者が5人しかおらず全ての機器に精通していないことや、標準品や消耗品など分析にかかるコストの問題などが挙げられる。今後は中毒分析だけでなく各種疾患における血中薬物濃度の測定などへの応用も検討中である。

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