第37回関東甲信地区医学検査学会 2000.10.14-15

「ネフロスカラ−・PR3−ANC」の基礎検討および臨床的意義

 

鶴巻茂(エスア−ルエル) 松村栄久(松村医院) 郡義明(天理よろづ相談所病院)

 

【目的】

抗好中球細胞質抗体PR3−ANCA測定試薬(新製品)の基礎検討を実施した。また従来品「ネフロスカラ-・C-ANC」と測定値が乖離した検体、およびPR3−ANCAが疾患活動性を反映しなかった症例について対応抗原の解析を行った。

 

【方法】

説明書に従い測定し、再現性、希釈試験、陽性率および相関性について検討した。また対応抗原の解析は従来品抗原と新製品抗原を用い、イムノブロット法にて解析を行った。

 

【結果および考察】

測定内変動は6.5〜9.9%、測定間変動は5.6〜8.1%であった。希釈試験では良好な直線性を認めた。従来品と新製品の相関はr=0.901であった。しかし測定値が乖離する検体を認めたため対応抗原を解析したところ、従来品抗原で29kDproteinase 3(PR3)以外に反応を認め、従来品での非特異的反応が示唆された。また、日常検査における陽性率は従来品4.03%、新製品3.83%であった。次にCおよびPR3−ANCAが疾患活動性を反映せず、持続的高値陽性となった全身型ウゲナ−肉芽腫症(WG肉芽腫症)の症例について同様に対応抗原を解析した。従来品、新製品抗原ともに29kD PR3に反応を認めたが、従来品抗原では54kDに強い反応を認めた。54kD抗原には陽性コントロ−ルも弱く反応した。尚、本症例はANCAサブタイプのBPI−ANCAは陰性であった。

 

【結語】

1.再現性、希釈直線性は良好であった。

2.従来品との相関はr=0.901であった。

3.従来品では非特異反応の存在が示唆された。

4.疾患活動性を反映しない全身型WG肉芽腫症では54Kd抗原に強い反応を認めた。