脳波無活動の際に混入する筋電図について
○高嶋浩一 古澤真由美 湯舟憲雄 櫻林郁之介
(自治医大大宮医療センター 臨床病理部)
【目的】
脳波無活動(Electro cerebral
inactivity:ECI)において混入する筋電図の性状を検討した。
【対象・方法】
臨床的に脳死状態と診断され、脳波検査を施行し、ECIと判定された53例を対象とした。脳波は10-20国際法に基づき針電極を頭皮に装着し、単極および双極誘導により、まず50μV/5mmの感度で低電位を確認した後、50μV/25mm(5倍感度)にて30分以上の記録を行った。
【結果】
ECIにおける筋電図の混入は、53例中23例(43.4%)に認められた。混入した筋電図は持続時間64.4±37.0ms、振幅22.3±17.2μVで、形状は2〜3相あるいは多相性、長持続性であり二重放電(doublet)を呈する波形もあった。波形の出現様式は、単発に出現したものが15例(65.2%)、4〜13Hzの頻度で反復して出現したものが4例(17.4%)、単発から持続性の反復放電に移行したものが4例(17.4%)であった。出現部位は側頭部が13例(56.5%)、前頭部が7例(30.4%)、後頭部が3例(13.0%)であり、記録中に出現部位が移動する例もあった。これらのECIに混入した筋電図は、経過を観察し得た全ての例で、時間の経過に伴って減少あるいは消失した。
【考察】
ECIに混入する筋電図は、波形の形状および出現様式から察すると、筋肉の異常自発活動である線維束電位(fascicuration
potential)、複合反復放電であることが示唆される。頭部には前頭筋、側頭筋、後頭筋などの筋肉が分布しており、これらの筋群を支配している脳神経、第1、第2頚神経などに急激な障害が発生し、頭部筋の筋線維が脱神経に陥り、ある一定の期間に高感度で記録している脳波上にアーチファクトとして混入するものと考えられる。
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