頸動脈バルーン閉塞テストにおける脳波モニタリング
○古澤真由美 高嶋浩一 湯舟憲雄 櫻林郁之介
(自治医科大学附属大宮医療センター)
森茂夫(同脳神経外科)
【目的】
頸動脈バルーン閉塞テストにおける血流遮断時の脳波を連続モニタリングし、脳波の変化と臨床症状の出現との関連について検討した。
【対象・方法】
内頸動脈狭窄症6例、脳動脈瘤2例、脳腫瘍1例、甲状腺疾患1例を対象とした。脳波モニタリングは血管造影室にて10-20国際法による単極導出で行い、脳波を連続記録しながらバルーンカテーテルにより頸動脈を閉塞し、脳虚血を反映する脳波の徐波化の有無と麻痺、意識低下、気分不快などの臨床症状の出現を対比した。
【結果】
頸動脈閉塞前の脳波は、全例8〜10Hzで40〜70μVのα波が頭頂、後頭部優位に出現した。閉塞直後の脳波は、10例中7例において変化はみられなかった。その後、閉塞テストは継続して20分間行われたが脳波の変化はみられず、臨床症状の出現も無かった。しかし10例中3例においては、閉塞直後から10秒以内に閉塞側の大脳半球に1.5〜2Hzで80〜100μVのδ波が持続的に出現した。このような脳波の徐波化は3例全てにおいて臨床症状の出現に先行し、徐波化に遅れて麻痺、意識低下、気分不快などの臨床症状が出現した。閉塞テストにより脳波が徐波化した3例中2例は対側の内頸動脈にそれぞれ20%、60%の狭窄が認められ、残りの1例は対側の内頸動脈に狭窄はみられないが脳底動脈が蛇行し、動脈系が全体に細くなっている所見があった。
【結論】
頸動脈バルーン閉塞テストにおける血流遮断時の脳波モニタリングは、臨床症状の出現に先行して徐波化として鋭敏に脳の虚血状態をとらえることができ、モニタリングとして極めて有用である。
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