第37回関東甲信地区医学検査学会
2000.10.14-15
急性前骨髄球性白血病(APL)の判別における表面マーカーの有用性
○小林一彦 栗原正人 坂中須美子 小山真弘 保坂利江
磯村眞理子 (埼玉県立がんセンター 臨床検査部)
【目的】
急性前骨髄球性白血病(APL)は、DICによる出血症状を伴うため迅速な診断および治療が要求される。今回APLの表面マーカーの特徴をまとめ、さらに表面マーカー陽性率を多変量解析を用いて解析し、APLの判別の有用性を検証した。
【対象・方法】
1991〜1998年の8年間に、当センターでAPLと診断された17症例、また対照としてAPL以外のAML(M1,M2,M4,M5)89症例を分析に用いた。
方法はAPL群とAML群の表面マーカー陽性率の比較を行い、その結果をもとに多変量解析の線形判別分析を行い、2群の判別を試みた。
【結果】
APLの表面マーカー陽性率は骨髄系マーカーのCD13とCD33が90%以上の陽性率を示し、Tリンパ球系マーカーのCD2,CD7とBリンパ球系マーカーのCD19は全例陰性、幹細胞関連マーカーのCD34,HLA-DRは非常に低い陽性率を示した。 APL群とAML群の判別分析の結果は感度100%、特異度93.3%となった。AMLをAPLと誤判別した6例はM1、M2ともに3例ずつで、CD13,CD33が高く、CD34,HLA-DRが低い特徴が認められた。
【考察】
今回の検討からAPLの表面マーカーの特徴としてCD13とCD33が(+),CD34とHLA-DR(−)の特異的なパターンが認められた。また判別分析の結果は高い判別率を示し、特に感度は100%と良好なものとなった。今回誤判別されたものは骨髄系のマーカーが陽性で、しかもCD34、HLA-DRの低いM1とM2であり、M3の表面マーカーの鑑別において注意が必要である。
【結語】
表面マーカーによるAPLの鑑別は客観性に優れ、診断精度が高く、形態学的検査の支援ツールとして有用性が認められた。
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