ABO不適合新生児溶血性疾患について
○鳥海洋 青木貞男 高山千枝子
(国立甲府病院)
【はじめに】
新生児溶血性疾患(以下HDN)の原因として血液型不適合、赤血球膜酵素異常など様々であるが、今回まれな疾患であるA型−AB型(母−子)のABO型不適合HDNを経験したので報告する。
【症例・経過】
《患者》 女性 A型、Rh(+)
・既往歴 特になし
・妊娠歴 4経妊2経産 人工中絶2回
妊娠37週4日、3015g、頭位自然分娩にて出生しアプガースコアー9/10点、哺乳、活気などは良好であったが、生後21時間のT-BIL11.3mg/dl 、45時間で15.8mg/dlとビリルビンの上昇を認め、生後48時間後に当院搬送となった。入院時の検査所見は、児の血液型はAB型Rh+直接クームスは陰性、母親はA型Rh+、不規則抗体は陰性であった。入院時より光線療法を行い、BIL値の改善も見られないため、(ABO不適合の診断前に)AB型のMAPとAB型のFFPの交換輸血を実施、なおクロスマッチは陰性、その後順調に回復し、日令13で退院となっている。
【まとめ】
ABO型不適合HDNを発症するものは母親がO型と考えられているが、この症例では母親がA型、児がAB型で発症している。児は4倍の抗B抗体を有し、母親はIgGのサブクラス1型の抗B抗体を256倍有していた。この事が発症原因になっていると考えられる。今回のようなHDNを診断するまでに、母親の出産経験なども踏まえた上で、的確な検査が選択されたといえる。
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