第37回関東甲信地区医学検査学会 2000.10.14-15

ABO不適合新生児溶血性疾患について

 

○鳥海洋  青木貞男  高山千枝子

         (国立甲府病院)

 

【はじめに】

  新生児溶血性疾患(以下HDN)の原因として血液型不適合、赤血球膜酵素異常など様々であるが、今回まれな疾患であるA型−AB(母−子)ABO型不適合HDNを経験したので報告する。

 

【症例・経過】

《患者》 女性  A型、Rh(+)

・既往歴 特になし

・妊娠歴  4経妊2経産 人工中絶2回 

妊娠374日、3015g、頭位自然分娩にて出生しアプガースコアー9/10点、哺乳、活気などは良好であったが、生後21時間のT-BIL11.3mg/dl 45時間で15.8mg/dlとビリルビンの上昇を認め、生後48時間後に当院搬送となった。入院時の検査所見は、児の血液型はABRh+直接クームスは陰性、母親はARh+、不規則抗体は陰性であった。入院時より光線療法を行い、BIL値の改善も見られないため、(ABO不適合の診断前に)AB型のMAPAB型のFFPの交換輸血を実施、なおクロスマッチは陰性、その後順調に回復し、日令13で退院となっている。

 

【まとめ】

ABO型不適合HDNを発症するものは母親がO型と考えられているが、この症例では母親がA型、児がAB型で発症している。児は4倍の抗B抗体を有し、母親はIgGのサブクラス1型の抗B抗体を256倍有していた。この事が発症原因になっていると考えられる。今回のようなHDNを診断するまでに、母親の出産経験なども踏まえた上で、的確な検査が選択されたといえる。

 

連絡先 055-251-6131(内線 352)