第37回関東甲信地区医学検査学会 2000.10.14-15

胸椎硬膜外腫瘍で発症した急性単球性白血病の1例

 

○小林由美 山崎美樹 加藤貴子 星香里
(帝京大学医学部附属溝口病院)

 

【はじめに】

Granulocytic sarcoma(GS)は腫瘤形成白血病として知られている。今回我々は胸椎硬膜外腫瘍および胃粘膜下腫瘍で発症した急性単球性白血病の1例を経験したので報告する。

 

【症例】

30歳 男性(主訴)両下肢のしびれ、歩行困難(既往歴)小児喘息(家族歴)特記事項なし(現病歴)平成9515日より両下肢のしびれ出現517日階段昇降困難となり、精査加療の為519日当院入院。521MRを施行胸椎硬膜外腫瘍(Th3~6)と診断される。摘出腫瘍の病理標本ではEMALCAL26UCHL1などの免疫染色はいずれも陰性、CT、末梢血液検査、骨髄検査でも異常は認められず、確定診断が困難であった。しかし同様の細胞を胃粘膜下に認めたため、悪性リンパ腫と診断された。その後、CHOP療法と胸椎への放射線照射で完全寛解となり退院した。平成10528日外来受診時、WBC 61500/μlと増加、芽球様細胞80%を認め再入院となった。

 

【入院時検査所見】

末梢血RBC468/μl WBC61500/μl Hb13.8g/dl HT42.9% PLT10.4/μl、リゾチーム活性101.0μg/ml骨髄検査有核細胞数146000/μl MGK13/μl 芽球様細胞96.2% POD陽性 非特異エステラーゼ強陽性より急性単球性白血病M5aと診断された。

 

【考察】

初診時摘出した腫瘍と白血病発症時の細胞は形態的に同一でいずれもCD68(KP1)陽性であることからGSよりAML(M5a)に発症したものと考えられる。この様な症例はリンパ腫と診断される事があり、これらの誤認をさけるため特染や免疫染色など骨髄系細胞に特意的な抗原も検索することが重要と思われた。

 

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