第37回関東甲信地区医学検査学会 2000.10.14-15
抗HLA抗体が関与したと考えられる
新生児同種免疫性血小板減少症の同胞発症例
○寺木佳子 狩野麻紀 松崎哲夫 原田功 今留淳(千葉県船橋赤十字血液センター)
船橋茂(千葉県赤十字血液センター)
森田庄治(埼玉県赤十字血液センター)
塚原優己(国保旭中央病院)
【はじめに】
新生児同種免疫性血小板減少症(以下NAIT)は、3000分娩に1例の頻度で起こると言われている。今回我々は、第1子、第2子ともにNAITをきたした稀な同胞発症例を経験したので報告する。
【症例】
母親は32歳、妊娠歴3妊1産。第1子は日令3より皮下出血と著明な血小板減少を認め血小板輸血を施行した。後日、母親血清検査で抗HLA抗体が検出された。第2子出産に際して第1子同様のNAIT発症を考慮し、予めHLA適合血小板(HLA-PC)を準備した。第2子の出生時の血小板数は正常であったが、翌朝には1.4万/μlと急激に減少し皮下出血も認められたため直ちにHLA-PC を輸血した。経過観察中血小板は0.9万/μlまで減少したが計4回HLA-PC輸血を行い、その後児の血小板は正常に回復した。
【血清学的検査結果】
母親血清中の抗HLA抗体の特異性はBw4+B35+B75+A24で、LCT、AHG-LCT、MPHA法での抗体価は各々1:32、128、25000倍を示した。妊娠経過中に抗体価上昇は認められず、抗HPA抗体も陰性であった。HLA型は父:A24,-B51,59,Cw1,-,Bw4,-,母:A11,-,B56,67,Cw1,7,Bw-,6であった。母親血清は父親、児(第2子)のリンパ球および児血小板と強く反応したが、児血清からは母親由来の抗HLA抗体は検出されなかった。
【考察】
抗HLA抗体の関与が強く示唆されるNAIT報告例の半数は第1子発症例で同胞発症例は数少ない。妊婦の抗体スクリーニング実施は第1子に発症するNAIT予知に有用と思われるが、コスト及び実際にNAITを発症する確率を考慮すると実用的とは言い難い。従って、少なくとも血小板減少や出血斑をきたした新生児を出産した既往の母親では本症を疑い精査すべきであろう。
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