第37回関東甲信地区医学検査学会 2000.10.14-15

白血球に特異な変化を認めた悪性症候群の一例

 

〇角田慎一郎 高木正義 篠田佳子 寺島美佐子
崎山恵里子 崎山志のぶ 佐藤文美 高橋英則
(国保旭中央病院)

 

【はじめに】

悪性症候群はおもに抗精神薬服用中に発症する、稀だが重篤な疾患である。今回我々は、非定型精神病で入院中に発症した悪性症候群患者において高熱によると思われる特徴的な白血球の変性像を認めたので報告する。

 

【症例】

45歳 女性 既往歴:19歳よりこれまで不穏状態、不眠にて神経科通院中。抗精神薬としてゾテピン フロロピペミドを処方されていた。今回不穏状態にて5回目の医療保護入院となる。入院約1ヶ月後発熱、血圧低下にて発症。

 

【発症時検査成績】

生化学 TP 4.6g/dl GOT 2820IU/l GPT 2020IU/l LDH 6100IU/l CK 9340IU/l BUN 22mg/dl Cre 1.2mg/dl CRP 0.4mg/dl ミオグロビン 6370mg/dl  血算 WBC 14400/μl Hgb 13.6g/l Plt9.9万/μl 血液像 myelo 2% meta 1% band 4% seg 48% lymp 39% aty-ly 1% mono 5% Er-blast 3/WBC100  好中球は花弁状に過分葉したものが32%みられた。リンパ球と単球は不規則にくびれの入ったものや花弁状のものがそれぞれ30% 60%みられた。好酸球と好塩基球は数が少なく変化は判然としなかった。3時間後の血液ではband 9% seg 80% lymp 5%  mono 6%と好中球優位となり変性白血球の割合は好中球1%、リンパ球16%、単球38%と減少した。24時間後の血液では変性像は全く認められなかった。

 

【まとめ】

今回我々が報告した白血球の変性は、同様に高体温を伴う乳幼児における稀な疾患であるHSESや熱射病でも認められ、その場合致死率は極めて高い。これらの疾患において血液標本上で特異な白血球の変性像を見出す事は予後を判定するうえで極めて重要な事であると思われた。