第37回関東甲信地区医学検査学会 2000.10.14-15
医療従事者のMRSA保菌状況
○高橋弘志、秋倉史、岩間暁子(国保君津中央病院)
【目的】
メチシリン耐性S.aureus(MRSA)は、院内感染対策上留意すべき細菌の一つである。当院では過去7年間に医療従事者のMRSA保菌状況を調べたので報告する。
【方法】
検査対象は’93〜’99で医師571名、看護婦2298名、派遣社員93名延べ総数2962名である。検体は綿棒で鼻腔粘膜を擦過し、MDRSU寒天培地を用い分離培養、菌同定検査にはMicroScan
WalkAwayを用いた。培養陽性者を対象にポピドンヨード(イソジンゲル)を用い1日数回、1週間治療後再検をして経過観察した。
【結果】
検査実施率は99.5%と高かった。MRSA陽性者は7年間で延べ124名、陽性率は医師2.5%、看護婦5.0%、派遣社員0%、平均4.3%であった。陽性者124名のうち、重複年陽性者は19名で、2回陽性者17名、3回1名、4回1名だった。陽性者124名の1週間治療後の除菌者数は92名(74.2%)、2週間治療後は112名(90.3%)であった。除菌できなかった12名は皆、重複年陽性者だった。一方、’94〜’99で当院のMRSA陽性患者総数は、1324名で陽性率の高い病棟はNICU病棟419名(31.6%)、脳外6F病棟195名(14.7%)、内科3F病棟181名(13.7%)の順であった。一番陽性患者の多かったNICU病棟スタッフでは、MRSA陽性者が7年間で7名(5.6%)と他病棟よりむしろ少なく、因果関係は特に認められなかった。また、NICU病棟スタッフ70名の手指MRSA保菌検査では、手洗い前陽性者40名(57.1%)、手洗い後9名(12.8%)であり、手指のMRSA保菌状況の高いことが判明した。
【まとめ】
当院の医療従事者のMRSA陽性率は3〜5%で推移していた。治療にはイソジンが有効であるが除菌できない者もいた。今後とも院内感染対策の一環として、また医療従事者の感染意識向上の為にMRSA保菌検査、手指洗浄検査を実施していきたい。
0438-36-1071(内)2148細菌室