輸血検査の統計学的解析
○伊藤洋美 千木良紀子 金子泰代
川島徹
川畑貞美(順天堂大学浦安病院 検査課 )
【目的】
輸血検査における不規則性抗体や直接クームス、の検出頻度はその検査室の標準操作手順書(SOPマニュアル)の改訂の指標になりまた重要な解析と考える。今回われわれは、当院輸血検査室における各種不規則性抗体及び直接クームス陽性原因を解析し若干の知見を得たのでここに報告する。
【方法】
当院検査室に検査依頼があった入院・外来患者において以下の統計学的解析を実施した。
1)抗体スクリーニング陽性で抗体同定を行った551症例での検討
2)直接クームス陽性110症例における陽性原因の検索結果の検討
【結果】
1)同定された抗体の約80%が冷式の抗体であった。低力価のために同定できなかったものが10%みられ、他は温式の抗体であった。
2)直接クームス陽性原因で最も多かったものは治療薬剤によるもので半数以上を占めた。血液型の抗体によるものは10%みられ、そのほとんどが不適合妊娠の新生児であった。他に、自己抗体によるものが10%、原因不明のものが20%で、少数ではあるが、赤血球の膜変化によるもの、高濃度IgGによる連銭形成なども認められた。
【考察】
冷式抗体は臨床的意義がないものが多いと言われているが、高力価の場合はABO血液型の裏試験の結果に影響することもあるので同定するべきと思われる。また、直接クームス陽性を惹き起こす治療薬剤のほとんどは抗生剤であり、多くの患者血清中から抗薬剤抗体が証明された。
【結論】
統計学的解析によって自施設の検出傾向を把握することで効率よく検査を進めることができる。また患者の病状および治療背景を考慮することも原因判明の近道となり、迅速に安全な輸血を行うことができる。
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