Myeloid/NK前駆細胞性急性白血病が疑われた一症例
〇竹内 豊 木村 正行 佐々木直志 島倉真美子
岩下 淨明
藤川 淳策 熊谷 昌明1)
(国立小児病院 研究検査科 同血液科1))
myeloid/NK前駆細胞性急性白血病は、NK前駆細胞由来と考えられている。白血病細胞は、光顕ぺルオキシダーゼ染色陰性で、CD7+CD56+、myeloid antigen+を示し、高頻度にリンパ節・縦隔病変を主体とする髄外病変を呈する。今回われわれは、初発時にはCD56陰性、再発時にCD56が陽性化したことからmyeloid/NK前駆細胞性急
性白血病と判明した1症例を経験したので報告する。
【症例】
10歳男児、1998年12月、嘔吐、倦怠感を主訴に入院。頚部から腋窩に多数のリンパ節腫脹と肝脾腫、胸部X線にて縦隔腫瘤を認めた。初発時の表面マーカーが、cyCD3、CD7、陽性であったことからT-ALLと診断し、ALLの治療を行ったが、無効のためAMLの治療に変更し完全寛解となった。翌年6月、非血縁臍帯血移植を施行したが、その後再発した。この時の表面マーカーは新たにCD8、CD33、CD56が陽性となりmyeloid/NK前駆細胞性急性白血病と診断された。
【入院時検査所見】
末梢血:WBC37.5×103/μl(芽球75%) Hb 11.8g/dl、Plt 89×103/μl
生化学:LDH 2,278 IU/l、UA 12.5mg/dl、他正常
骨髄:NCC 320,000/μl(芽球94%)、MPO陰性
骨髄細胞表面抗原:CD7,13:陽性
細胞質抗原:cyCD3:陽性
TCR遺伝子の再構成:陰性
【細胞所見】
末梢血の異常細胞は、N/C比は大きく、大小不同があり、核に切れ込みを認める。細胞質にアズール顆粒は認められない。特殊染色ではペルオキシダーゼ染色、非特異的エステラーゼ染色、PAS染色共に陰性。
【考察】
CD56が陽性になり、NK腫瘍研究会における暫定診断基準によりmyeloid/NK前駆細胞性急性白血病と確定した。また、CD56陰性であっても縦隔腫瘤を有し、cyCD3、CD7、CD13またはCD33陽性の場合にも、myeloid/NK前駆細胞性急性白血病を考慮する必要がある。