第37回関東甲信地区医学検査学会
2000.10.13-14
株式会社富士経済 東京マーケティング本部
工藤 直史
日本における臨床検査は、その自動化の歴史とともに飛躍的な伸びを示してきた。
1960年代後半から「オートアナライザー」に代表される生化学検査の自動化システムが導入され、日本における自動化の歴史がスタート。その後、国産メーカーが自動化学分析装置分野に参入したことで、特に70年代後半以降本格的な検査時代が到来することになる。この時期は同時に日本の高度経済成長期とも重なり、検査は飛躍的な伸張を遂げることになる。
以降10年くらいは検査が病院経営にとって重要な稼ぎ頭となっていく。しかしこの間、検査は自動化の推進と量的拡大を続けるが、一方では日本の高齢化が急速に進み老人医療の財政面での悪化と90年のバブル経済崩壊の影響を受け、病院経営は急激に悪化の一途をたどることになる。当然様々な視点から検討を迫られ、特にコストの見直しが重要課題となり、従来病院収益の大きな支えであった検査部門も例外ではなく、内部における省力化、合理化のみならず、検査そのものを一括して外部委託するというアウトソーシングの時代に一気に進むという予想外(ある意味では必然的な)の展開になってきた。いわゆるブランチラボの導入であり、FMS方式(Facility
Management Service)の導入である。両者の中間的なものもあり、その実情に合わせた様々な形態が導入されている。
現在全国で600〜700施設がブランチラボやFMSを導入しているといわれている。導入施設も従来は比較的中小規模の病院での導入が中心であったが、最近の特徴は地域の基幹病院、公的病院、大学病院など大病院での導入が目立って増えていることが注目される。それだけ多くの施設での財政基盤が深刻な事態を迎えているということでもあり、待ったなしの苦渋の決断といえよう。事態は様変わりの様相を呈してきている。様々な視点から医療そのものが大きく転換しなければならない岐路に立っているといえる。従来の延長線上で臨床検査を考えていては生き残れない。
まず現状認識と意識改革が非常に大事であると考える。拠って立つ基盤そのものが揺れてきたわけである、存在そのものが問われているとも言える。
患者を中心として最善の医療を提供することが求められるが、医療スタッフは、役割に固執する余り全体が、特に患者が見えていないのではないか。臨床検査でいえば、検査室から一歩踏み出す行動が必要である。クリニカルパス、チーム医療など患者情報の共有化を推し進めていくなかで患者が見えてくるし、自らの役割を一歩も二歩も広げていく、コミュニケーションも非常に重要である。自らの存在をその場面場面でアピールできなければ生き残れない。
このあたりの事柄中心として、関連業界の情報を付記しながらご報告致します。