第37回関東甲信地区医学検査学会特別企画(シンポジウム)
2000.10.14-15
臨床検査技師のチーム医療への参画
鐘紡記念病院 臨床検査科 菊池 正幸
【はじめに】
近年,病院を取り巻く経営環境は,医療法改正や診療報酬の改定でさらに厳しさが増している.この変化は検査室の環境の変化でもある。 平成12年4月の診療報酬改定により、検体検査管理料(I)が新設され病院検査室の存在意義が若干明確になってきた。しかし、当検査部の検体検査での減点は保険実収入の7.6%発生し、検体検査管理料加算(I)は2.1%と微増であり、両者の相殺で5.5%の減収になる。また、200床以上の病院における外来再診丸めに尿、便、血液一般検査点数が約7%含まれ、全体で12.5%の減収となり、検査部の運営はますます厳しくなっている。臨床検査技師の長期展望について改めて考えてみると,最大限の合理化を進めると共に人材の有効活用をはかり,現有人員によるチーム医療への積極参加を意識し,医師に対し診療支援,看護部に対し看護支援を行う「職域拡大する環境」作りが必要である。
今般、鐘紡記念病院臨床検査部での迅速検査体制と業務の再構築によるチーム医療の実践から医師、看護部に対する業務支援を以下に紹介する。
1. 迅速検査体制(採血受付から結果返却まで)
(1) 尿:一般定性10分以内、沈渣含め20分以内
(2) 血液:血球計数10分以内、血液像30分以内
(3) 生化学:(T)30分以内、(U)1時間以内
(4) 免疫血清:免疫項目30分以内、感染症項目1時間以内
2.診療・治療支援(迅速な医療を目指して)
(1)データの迅速報告(検査結果が必要なときに,データが手元に)
(2)診察室での検査オーダーの手伝いとデータ解説
(3)検査データのコメント貼付(病棟と特殊外来)
(4)特殊外来に対し、個人でなく検査部全体での対応とサポート
(5)検査データによる診療支援から、治療支援への積極介入と介助
(6)手術室でのベッドサイド検査(血液ガス、血糖、電解質、手術中SEPモニタリング)と写真撮影
(7)細菌検査月間・年間動向報告(検出菌と感受性の動向)
(8)病診・病病連携への積極的対応(データの一元管理とフィードバック)
(9)外来各科における諸検査の積極的な参入(内視鏡、産婦人科エコー、心筋シンチなど)
(10)患者教育への参入(糖尿病、骨粗鬆症など)
(11)ハンディータイプの超音波装置を用いて、訪問診療時同伴エコー検査
3.看護支援(より看護に専念できるために)
(1)採血業務の全面移管
(2)患者への早朝採血の事前説明を前日夕刻に行う
(3)病棟への出張生理検査(心電図、脳波、心エコー、腹部エコー、肺機能検査、神経伝導速度検査)
(4)検査データの合理的工夫と貼付
(5)異常データ項目及び数値と患者の要望をコメントカードに記載しカルテに添付
(6)外来各科における諸検査の積極的代行(眼科、耳鼻科、内視鏡など)
(7)人間ドックにおける身体測定を含む諸検査の積極的代行と健康増進の運動指導
(8)院内感染管理と院内環境検査および施設内殺菌作業の実施
【おわりに】
これらの展開に於いて,患者サービスの質の向上を念頭に検査技師は,みずからのマネージメント意識と経営感覚を高め,必要な学会認定資格を取得し眼科や耳鼻科領域のような他領域にも視野を広げた職域拡大を行い.病院の機能を高めるために,関係部署の支援体制作りと画像を含めた検査データファイリングなど,検査部は院内の情報発信基地としての存在を確立することが急務であり,早期具現化が必要である.