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腎疾患患者における脂質代謝異常特にLDLについての検討  

◯津村 真由美、角 映里佳、上野 芳人、三橋 裕行、桑田 昇治、木野内 喬(帝京大学市原病院 中央検査部、ビーエムエル)

【目的】動脈硬化症を進展させる一因として、

HDLはその低下が、LDL特に変性LDLの増加が動脈硬化を促進することが知られている。われわれは、保存期の腎不全患者を対象として血清中のLDL分画を抽出し、その移動度の変化を電気泳動的に確認し、酸化、糖化などの変性LDLの動態について検討をした。

【対象と方法】対象;保存期の腎不全患者(CRF)26例と健常者28例である。

方法;1)T-CHO、TG、LDL-C、HDL-C、アポリポ蛋白は日立7600自動分析機にて測定した。2)超遠心法にてLDLを分離し、polyacrylamide 電気泳動法により解析した。3)アミノフエニルボロン酸(PBA)カラムを使用し、糖化LDL(GLDL)と非糖化LDL(NGLDL)に分離して、LDLの糖化率を測定した。4)nitrotyrosineに対する抗体でWesternblot法を行い、LDLの酸化の有無を確認した。

【結果】1.T-CHO、TG、アポB/A-I比は健常者に比較してCRFで高い結果であった。HDLは逆に健常者に比べて低く、C2/C3比では有意差は認められなかった。

2.CRFのLDLは電気泳動の結果、19例(73%)で移動度の早いLDL分画が確認された。

3.PBAカラムを使用し、GLDLを分離した結果、CRF患者特に糖尿病性腎症の患者では健常者に比較してGLDLが増加していた。

【まとめ】CRFでは糖による修飾や、酸化により変性LDLが増加しており、動脈硬化発症・進展に密接に関与していることが示唆された。