肝疾患、悪性腫瘍患者のミトコンドリアCK活性について
◯角映 里佳、上野 芳人、三橋 裕行、桑田 昇治、木野内 喬(帝京大学市原病院 中央検査部)
【目的】われわれは、健常者の血清CKアイソザイム分析において原点位より陰極側の位置に特異バンドを観察し、このバンドがミトコンドリアCK(mCK)であることを既に報告した。今回、肝疾患および悪性腫瘍患者の血清mCK測定の臨床的有用性について検討したので報告する。
【対象と方法】1.対象は肝疾患56例、悪性腫瘍7例(胃癌5例、子宮癌1例、卵巣癌1例)、健常者は当院職員346例の新鮮血清を用いた。
2.特異バンドはヘレナ社のCKアイソザイム電気泳動法で検出し、その分画比も求めた。特異バンドの性状は抗CK-M阻害抗体および 尿素との反応性により確認した。
3.ヒト心筋組織より分離したミトコンドリアからmCKを抽出し、ウサギに免疫して抗ヒトmCK IgGを精製した。
【結果】1.特異バンドは、抗CK-M抗体による阻害が認められず、尿素処理後の電気泳動で、易動度は陽極側に変化した。
2.Westernblot法での抗mCK抗体と特異バンドとの反応が認められ、CK-MM、MB、BBとは反応しなかった。
3.健常者の特異バンド分画比は、2.90±1.80%で、mCK活性値は2.55±1.22U/lであった。疾患群では、肝疾患(5.93±2.61U/l)、悪性腫瘍(3.57±1.91 U/l)の両群とも、mCK活性値が健常者に対し高値を示した。
【まとめ】CKアイソザイム分析で検出した特異バンドは、その性状からmCKであることが示唆された。肝疾患および悪性腫瘍患者の特異バンドのCK活性値が健常者に比べ高値を示したことから疾患群では組織破壊が顕著であると考えられた。