糖尿病性腎症における血清脂質、アポEフェノタイプの解析
◯小西智恵子、上野芳人、三橋裕行、桑田昇治、木野内喬(帝京大学市原病院 中央検査部)
【目的】糖尿病において、脂質代謝異常に基づく動脈硬化症の発症進展はその管理上きわめて重要である。今回は糖尿病性腎症を中心に、血清脂質およびアポEフェノタイプを測定し、その臨床的意義を検討したので報告する。
【対象】対象は合併症のない糖尿病患者31例、糖尿病性腎症36例、健常者群は当院職員200例である。
【方法】血清脂質は日立7600自動分析装置にて、総コレステロール(TC)酵素法(和光純薬)、
LDLコレステロール(LDL-C)酵素法(第一化学薬品)、HDLコレステロール(HDL-C)酵素法(協和メデックス)、中性脂肪(TG)酵素法(和光純薬)を測定した。また、アポリポ蛋白質を測定し、等電点電気泳動法によるアポEフェノタイプ分析を行った。
【結果】1.糖尿病および糖尿病性腎症患者は健常者に比べ、TC、LDL-C、TGおよびアポB/A-T比とも高値を示し、HDL-Cは低値を示した。
2.アポEフェノタイプ別に血清脂質を比較したところ、健常者および疾患群ともE2、E3、E4を有する群の順にTC、LDL-Cが高値傾向を示した。
3.アポEフェノタイプ別で血清脂質を比較をしたところ、E2、E3、E4群とも糖尿病に比べ糖尿病性腎症で、血清脂質は高値を示したが、特にE4群でその傾向が著しかった。
【まとめ】糖尿病患者では動脈硬化症の発症進展が指摘されているが、糖尿病性合併症、特に糖尿病性腎症で動脈硬化性疾患発症の進展度がより高いことが示唆された。また疾患群でE4を有する群は、動脈硬化性疾患のより高い危険因子であることが考えられる。