血液培養からAbiotrophia adiacensが検出された一例
◯齋藤郁子 山口恵美子 倉持昌子 仲沢正美 佐藤洋子(千葉県がんセンター)
【はじめに】Abiotrophia属はNVS(nutritionall-y variant streptococci)として知られており、発育にL-システイン塩酸塩とピリドキサル塩酸塩を必要とする。また口腔内の常在菌であり、細菌性心内膜炎の起因菌の一つとしても注目されている。今回、我々は急性白血病(M3)患者の血液培養からA.adiacensを検出したので報告する。
【細菌学的検査】血液培養ボトルからの分離菌はグラム陽性多形性球菌として観察された。サブカルチャーした羊血液寒天培地の炭酸ガス培養では発育が認められなかった。しかし血液加ブルセラ寒天培地の嫌気培養で発育が認められたため嫌気性菌を疑った。確認のため、BYチョコレート寒天培地を用い炭酸ガス培養を行ったところα溶血の集落が得られた。またHK半流動生培地で発育した本菌が、グラム陽性連鎖状球菌を呈したことからNVSを疑った。同定はrapid ID 32 STREPを使用しA.adiacensの菌名を得た。更に鹿児島大学歯学部に精査を依頼し、A.adiacensと確認された。薬剤感受性検査はβラクタム系に感受性、アミノグリコシド系、OFLX及びST合剤に耐性を示した。
【まとめ】今回の症例では、サブカルチャーとして嫌気培養を行ったことやBYチョコレート寒天を用いて嫌気性の確認をしたことが菌同定に有用であった。NVSは、今まで嫌気性菌として扱われていた可能性もあると考えられる。本菌属のような栄養要求性の厳しい菌を念頭において検査を進める必要性を実感した。なお、患者は歯肉炎を疑われる自覚症状を訴えていることから、口腔内を侵入門戸とする菌血症と推定される。
最後にご精査くださいました鹿児島大学歯学部佐藤節子先生に深謝いたします。