テイコプラニン感受性のVanA遺伝子を有するEnterococcus faeciumの検出例
◯丸山 英行、木全 淳一郎、岡田 美友紀、須永 律子、桑田 昇治、木野内 喬 (帝京大学医学部付属市原病院)
【はじめに】VREは米国などにおいて、院内感染の重要な菌種として対策が講じられている。今回我々は海外より持ち込まれたと思われる、Van 遺伝子型簡易推定法に合致しないVREを検出したので報告する。
【症例】患者:43歳 男性。平成10年3月、インドネシア勤務中、肛門周囲膿瘍発症。5月、帰国し当院紹介受診となりAML(M1)と診断された。化学療法開始時にかねて治療中であった肛門周囲膿瘍の細菌検査でEnterococcus faeciumを検出し感受性を測定したところVCM≧256μg/mlのVREであることを確認した。
【細菌学的検査】検出された株はWalkAway(DADE BEHRING)にて同定・感受性試験を行った。VCMとTEICはEテスト(アスカ純薬)を用いてMICを測定し簡易推定法による表現型の分類を行った。またPCR法を用いVan遺伝子型の分類を行った。
【結果】簡易推定法ではVCM≧256μg/ml、TEIC 0.094μg/mlを示しClassBと分類された。PCR法による分析ではVanAプライマーにより増幅された明瞭なバンドを認め表現型ではClassB を示すVanA遺伝子保有株であることが確認された。
【考察】今回検出された株は表現型だけでは正確に保有遺伝子を鑑別することは難しい。VREが検出された際はPCR法などで確認するか、然るべき機関に精査を依頼しより確実な院内感染対策を講じることが必要と思われる。
今回のケースは海外滞在中に感染を受けていた患者が全く別の疾患で入院したため感染が証明された例で、院内感染対策を行う上でICUを中心としたスクリーニングの他に海外渡航暦なども検索条件に加味したスクリーニングを行う必要性があると考えられた。