膵原発肝様腺癌の一例
◯高橋 久雄、加藤 拓、津嶋 朋子、安藤 智子 徳泉 美幸、井田 喜博 (船橋市立医療センター検査科)
【はじめに】
肝様腺癌 (hepatoid adenocarcinoma)は胃・腸管・肺などの内胚葉臓器および膀胱・腎盂・子宮内膜などの泌尿生殖系臓器の上皮系細胞から発生する癌腫でAFP
(α-fetoprotein) を産生する非肝細胞型・非卵黄嚢腫瘍性の腺癌様悪性腫瘍である。肝様腺癌は卵巣の類肝細胞癌(肝様癌),肝様卵黄嚢腫瘍(hepatoid
yolksac tumor )などと共に広義の肝様腫瘍の一型として位置づけられている。
今回,膵原発で肝細胞癌様の細胞像を呈した興味ある症例を経験したので報告する。
【症例】
33歳.男性。十二指腸潰瘍の治療をおこなっていたが,黄疸の発症により当センターを受診。超音波検査にて膵頭部に腫瘤を認め,レ線にて膵頭部膵管の狭窄より,膵頭部腺癌の診断で手術を行った。
【細胞所見】
腫瘍性背景に重積性の乏しい細胞が,平面的に出現した。細胞質は比較的豊富でライトG好性で多辺形を示した。また, 細胞質内に球状硝子体(globular
hyaline body)を散在性に認めることができた。核は類円形を主体に軽度大小不同を認め,クロマチンは顆粒状〜粗顆粒状,核小体は小型円形のものが一個,核縁は比較的均一であった。
【組織所見】
膵管内では索状・乳頭状・管状の発育形態を示した。膵管周囲では大型の胞巣を形成し,その中に重積性・索状な増殖を呈した肝様腺癌像を認めることができた。免疫染色では AFP(+),クロモグラニン(−),CEA(−)であった。