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心エコー図による血液疾患患者の心機能評価と有用性

○福田憲一 庄野かおり *志鎌伸昭(千葉市立病院 臨床検査科 *同内科)

【はじめに】造血器腫瘍の治療時、多量のanthracycline 系薬剤やcyclophosphamide等の投与により、薬剤性の心筋障害から心機能低下を及ぼし、原疾患の治療に支障を来す事がある。 今回、血液疾患患者の心機能について、治療前後の心エコー図検査を実施し比較検討したので報告する。

【方法】以下の計測値の推移を比較検討した。1)左室駆出率(以下EF)、2)1回心拍出量(以下SV)、3)心拍出量(以下 CO)、4)心拍数(以下HR)、5)左室流入血流波形からE波、A波の比 (以下E/A比)

【対象】対象は、基礎疾患に心疾患が無く、治療実施前後に心エコー図検査を実施した8例とした。 年齢21〜52(37±13)1)化学療法前後:ALL×1、2)移植療法前後:ALL(L2)×1、AML(M5a)×1、CML×1、NHL×3、AA×1

【結果】左室収縮能を示すEF及びSVは、治療前後において有意な変化を示さなかったが、拡張能を示すE/A比においては、治療前1.55±0.50、治療後1.03±0.38と有意な低下が見られた。

【考察およびまとめ】近年心機能評価において、左室収縮能が保たれているにも関わらず、左室拡張能の低下により心不全状態を呈する例が多数報告され、拡張能が再評価されている。今回の検討では収縮能に有意な変化はなかったが、拡張能を示すE/A比には有意な低下が見られ、薬剤による早期の心筋障害を呈したと思われる。今回の症例群は、一般的な収縮能のみでの心機能評価では、薬剤性の早期の心筋障害を指摘できなかったと思われ、拡張能測定が有用であった。      連絡先 043(227)1131 内線334