ABO異型HLA適合血小板輸血で輸血効果が見られなかった一例
○伊藤道子 佐藤美智 稲田豊(千葉県がんセンター 輸血療法科)
【目的】HLA適合血小板輸血の際、日本赤十字社ではHLAタイプを優先させる為、供給される血小板のABO型は患者血液型と異なる場合がある。私達は、HLA適合血小板の輸血に際し、ABO異型が原因で輸血効果の見られなかった1症例を経験したので報告する。
【症例】患者は33歳女性、O型、Rh(D)陽性。1998年7月に悪性リンパ腫にて当センタにー入院、PBSCT併用大量化学療法を施行。その間治療と並行し、MAP血と血小板を頻回に輸血した。1999年5月に当科MPHA検査陽性の為、日赤船橋センターに精査を依頼し、HLA抗体陽性と判定された。その後の血小板輸血はHLA適合血小板に切り替えた。
【方法及び結果】日赤船橋センターによるHLA抗体検査はAHG-LCT法陽性で、血小板特異抗体検査は陰性であった。HLA適合血小板輸血13回(A型2回、B型5回、O型6回、AB型1回)のうち5回(A型1回、B型4回)のCCI(1日後)が4500/μl以下のため輸血効果は見られなかったと判定した。
【考察】本例でHLA適合血小板輸血の効果が見られなかった5回は、AまたはB型であったことより、その原因はABO異型のためと推測された。この場合、患者の抗A抗B抗体価と、ドナー血小板上のAまたはB型抗原量が影響を及ぼすと考えられる。今回のように、HLA適合血小板でも輸血効果のない場合には、ABO同型HLA適合血小板の輸血を考慮する必要がある。供給は、ドナー確保が困難であると思われるが、今後とも血液センターの協力を求めて行くと共に、病院側も、輸血に際し、常に効果の判定を実施することが必要であると考える。
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