Partial Dの一症例
◯稲田 豊、伊藤 道子、佐藤 美智(千葉県がんセンター)
【はじめに】平成11年6月に改訂された輸血療法の実施に関する指針の中でRh(D)抗原の検査は『検査が抗原陰性の患者の場合には、抗原陰性として取り扱い、間接抗グロブリン試験による弱反応性のD型の検査は行なわなくてもよい』とされた。今回我々は、Rh(D)抗原の検査でPartialD Xaの1例を経験したので報告する。
【症例】患者は68歳男性、輸血歴無、胆管癌の疑いの為、平成11年1月当センター入院。血液型O型、Rh Ccee、DAT(−)、抗体スクリーニング検査(−)。医師スライド法Rh(D) 血液型判定(+)、輸血療法科Rh(D)試験管法判定(−)室温と反応性が異なった為、精査を実施した。
【方法および検査結果】
抗D血清 生食法 Pegクームス法
W社モノクロ (3+) (3+)
O社ブレンド (−) (3+)
S社モノクロ (−) (−)
以上の結果よりDvariantの疑いで千葉県赤十字血液センターに精査を依頼した。
【結果および考察】日本赤十字社の精査結果はPartialD Xaであった。当センター使用の抗D血清は医師判定用はW社モノクロナール、輸血療法科はO社ブレンドを使用しており、抗D血清の反応性の違いにより今回のケースが判明した。各施設で使用する抗D血清(モノクロナールあるいはポリクロナール等)の反応性は製造メーカーが異なる場合、D抗原エピトープに欠損が認められるPartialD等では通常のD陽性に比べ各社反応性が異なる。また、少数ではあるが輸血や妊娠により抗D抗体を産生した報告例があり、臨床的に重要な場合も考えられる。抗血清の特性を充分理解した上で使用することが今回の改訂指針では重要である事が示唆された。