第22回千葉県臨床衛生検査学会抄録(平成13年2月11日開催)



ミトコンドリアCKは酵素阻害法によるCK-MB 測定値に影響を与える

○上野芳人 三橋裕行 桑田昇治 木野内 喬(帝京大学医学部附属市原病院)

【目的】われわれは、肝疾患および甲状腺疾患のCKアイソザイム分析で検出された特異bandのCK活性が健常者に比べ高値を示し、このbandがミトコンドリアCK (mCK) であることを報告してきた。さらに、日常検査において心筋梗塞以外の患者が、CK-MB/CK総活性比が25%以上を示す症例をしばしば経験している。そこで今回はCK-MB/CK総活性比が25%以上を示した肝疾患患者と甲状腺疾患患者について解析を行ない、mCKがCK-MB測定値に及ぼす影響について検討したので報告する。
【対象】患者群は、甲状腺機能亢進症14例、肝疾患患者34例、健常者は、当院職員59例の新鮮血清を用いた。
【方法】1.CKアイソザイム分析はヘレナ社のアガロースゲル電気泳動法で行った。
2.CK総活性とCK-MB活性(ニットーボー)は日立7600自動分析機で測定した。また、CK-MB蛋白定量はバイエルメディカル社のCKMB試薬を用いACS180自動分析機で測定した。
【結果】1. CKアイソザイム分析での各 band の出現頻度:健常者および疾患群とも、mCKの band が全例認められた。MBは、甲状腺機能亢進症で8例(57.1%)、肝疾患群で22例(64.7%)と健常者(37.5%)に比べ出現頻度が高かった。BBは甲状腺機能亢進症(2例)および肝疾患群(2例)でのみ認められた。2. CK-MB/CK総活性比の異常高値例:疾患群について酵素阻害法によるCK-MB活性を測定し、CK-MB/CK総活性比を求めたところ、健常者では25%以上を示した例は認められなかったのに対し、甲状腺機能亢進症では5例(35.7%)、肝疾患では12例(35.3%)と高頻度に認められた。また、CK-MB/CK総活性比が25%以上を示した例のうち、甲状腺機能亢進症例でCK-MB蛋白量が13.7 ng/mlを示した以外は、すべてCK-MB蛋白量は基準値範囲内であった。
【まとめ】健常者および疾患群とも、mCKの出現が全例認められたが、MB、BBは健常者より疾患群で高率に出現した。また、CKMB/CK総活性比が25%以上を示した例が肝疾患患者と甲状腺機能亢進症患者で多く認められたことから、これらの例ではCK-MB 以外のCKアイソザイムすなわち mCKおよびBBが測定され、CK-MB 活性測定値が見かけ上高値になった可能性が高いと考えられた。
        電話 0436-62-1211(1216)
アドバンテージUの基礎的検討および他機種との比較評価

○浪川薫 市原文雄 広原朋代 大野一彦
伊藤和男(社会保険船橋中央病院)

【目的】わが国の糖尿病患者数は約690万人といわれている。糖尿病患者にとってSMBGは、自己管理手段として必要不可欠なものとなっている。
今回我々は、簡易血糖測定器の新機種導入を目的に「アドバンテージU」及び、他機種との比較検討を行ったので報告する。
【測定機器】SMBG用機器:アドバンテージU(ロシュ・ダイアグノスティックス)グルコカード(アークレイ)メディセーフ(テルモ)対照用機器:
GA-1140(アークレイ)
【方法・結果】
1.同時再現性:正常域,異常域の2濃度の試料を5重測定した時のCVは、それぞれアドバンテージUで0.43%,0.51%、グルコカードで4.37%,0.84%、メディセーフでは3.07%,1.14%であった。
2.Ht値の影響:Htを20〜60%まで変化させた時、各機種ともHt上昇に伴い測定値の低下を認めた。
3.マルトースの影響:アドバンテージUで、マルトースの添加量の増加に伴い、正の影響を認めた。
4.測定場所による影響:明るい室内と暗い室内で3濃度の試料を測定した。メディセーフで室内の明るさによる影響が認められた。
5.相関:GA-1140との相関(n=30)は、アドバンテージUでr=0.995,y=1.014x+2.161、グルコカードでr=0.990,y=1.196x−7.142、メディセーフでは、r=0.970,y=1.161x−2.780であった。
【考察】今回我々が検討したアドバンテージUは再現性、GA-1140との相関性とも良好な結果が得られた。しかし、輸液点滴中に含まれるマルトースについては注意が必要である。
047-433-2111(内線2604)

制作・著作:社団法人千葉県臨床衛生検査技師会