千臨技会誌 2001 No.3 通巻83 |
シリーズ | 細胞レベルの病理学 20.膠原線維形成性糸球体腎症(collagenfibrotic glomerulonephropathy) |
千葉社会保険病院 岸澤 充 千葉大学医学部第一病理学教室 梅宮 敏文 千葉県こども病院 中山 茂 |
研 究 | 「小児肥満と臨床検査」 | 安房医師会病院 高 橋 金 雄 |
研 究 | LDH活性阻害を呈したLDH結合性 免疫グロブリン血症の一症例について |
帝京大学医学部附属市原病院中央検査部 高階成実 津村真由美 上野芳人 三橋裕行 桑田昇治 木野内 喬 菅野 勇 |
研 究 | 当院の時間外微生物検査の現状 | 浦安市川市民病院 ○石川 恵子 木村 英樹 |
資 料 | 検査収支管理の一方法 | 亀田総合病院 臨床検査室 庄司 和行 |
施設紹介 | 日本医科大学付属千葉北総病院 |
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シリーズ |
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細胞レベルの病理学 20. 膠原線維形成性糸球体腎症 (collagenfibrotic glomerulonephropathy) |
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千葉社会保険病院 岸澤 充 千葉大学医学部第一病理学教室 梅宮 敏文 千葉県こども病院 中山 茂 |
【はじめに】 | ||||
膠原線維形成性糸球体腎症は、蛋白尿を主徴とし糸球体に膠原線維が集塊状かつ進行性に沈着する疾患である。本症は、ネフローゼ症候群を呈することが多く、しばしば高血圧を伴い貧血傾向がみられ、血清中のV型コラーゲンが高値を示すことを特徴とする。 | ||||
【組織学的特徴】 | ||||
症例は64才男性、高血圧、ネフローゼ症候群を主訴とし、腎生検が施行された。病変は糸球体に限局し、糸球体はびまん性に腫大し、係蹄壁の著しい肥厚とメサンギウム領域の拡大を認め、細胞成分は減少している。PAS染色では糸球体全体を無構造性の沈着物で占められているようにみえ、アミロイド症を思わせられるが、Congo-Red染色は陰性である。PAM染色では、強陽性を示し、細線維状物質が糸球体内に観察される(写真1・2)。 | ||||
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写真−3 糸球体係蹄壁の電顕像。内皮下腔からメサンギウム領域にかけて多量の線維状 構造物(矢印)が蓄積している。 BM:基底膜 Ep:上皮細胞 F:足突起 bar=2μm |
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写真−4 糸球体に蓄積した線維状構造物の拡大像。規則的な横紋構造が認められ、間質 型膠原線維の特徴を示している。bar=500 nm |
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【電顕的特徴】 | ||||
確定診断のためには、電顕的検索が必須である。糸球体のメサンギウム基質内から基底膜の内皮下腔にかけて、大小の線維構造物が集塊状に蓄積している(写真3)。強拡大では、この線維に規則的な横紋構造が認められ、V型膠原線維の特徴を示している。これらの線維構造は、互いにねじれて絡み合ったspiralled
collagenの形態を示している(写真4)。 本症は爪と膝蓋骨の変形と糸球体への膠原線維沈着をきたすnail-patella症候群との異同が問題とされ、本症をこれらの亜型とみなす報告もあつたが、前者では膠原線維の分布がほとんど糸球体基底膜内に限局し、また本症ほどの高度な蓄積はみられない。一方、膜性増殖性腎炎や巣状糸球体硬化症などの糸球体においても膠原線維の出現をみる場合があるが、いずれもfocalで、メサンギウム基質内に不規則な分布で認められるにすぎず、その量も少なく本症のようにいずれの糸球体にもdiffuseに認められることはない。 |
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【参考文献】 | ||||
1) 山中宣昭:基質障害を特徴とする腎炎・腎症,病理と臨床,Vol.10,臨時増刊号,66-67,1992 2) 石山剛他:糸球体に多量の膠原線維増加を認めた腎炎の検討,腎と透析,Vol.19,1275-1281,1985 |
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研 究 |
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「小児肥満と臨床検査」 |
安房医師会病院 高 橋 金 雄 |
小児肥満の合併症
表4は、収縮期血圧130oHg以上の頻度を小学生・中学生別に、また肥満度別に示したものです。肥満者全体でも小学生で18%以上、中学生で14%以上が血圧高値であり、また肥満度が高い程この頻度は増加していました。特に60%以上の高度肥満者では小学生では1/3、中学生では2/3にのぼりました。 表5にその他の異常の小児肥満における出現率を示します。肝機能異常5.6%、コレステロール高値12%、中性脂肪高値8%、HDLコレステロール低値5.4%の出現率でした。 次に小児における肝臓のエコー所見を示します。表6は非肥満の小児、肝機能異常を示す肥満者、示さない肥満者についての肝臓のエコー所見を示します。 上段に示した肥満のない小児では脂肪肝は見られないのに対し、中段に示した肝機能検査異常あるいは高中性脂肪血症を有する小児肥満者では22名中11名50%に脂肪肝がみられました。 小児肥満者では以上述べましたようにすでに合併症をもっているということが明らかとなりました。以下の検討ではこのような合併症がどういう肥満に出現しやすいかを検討しました。
これを肥満度で分けたものを図5に示します。合併症のない成人肥満の頻度を肥満度で分けてみると、確かに肥満度が増加すると、合併症のない肥満の頻度は少なくなりますが、肥満度40%以上の中等度肥満でも28%即ち4分の1強の肥満者が合併症をもたないという結果でした。このことは、合併症の出現には肥満の「程度」以外の要素を考える必要性を示唆しています。 図6は、成人の肥満が、腹部CT写真における脂肪分布のちがいにより2種類のにわけられることを示したものです。左右の写真は、ほぼ同じ肥満度の成人のへその高さにおけるCT像です。左の写真は皮下脂肪の多い型であり、右の写真は内臓脂肪の多い型であり、Vで表わした内臓脂肪の面積とSで表わした皮下脂肪の面積の比V/S比を算出して、内臓脂肪蓄積の程度の指標とします。このV/S比が0.4以下の皮下型肥満と、V/S比が0.4以上の内臓型肥満にわけられています。図7に示すように、V/S比が0.4以上の内臓型肥満では、合併症のない成人肥満は8%にすぎませんでした。この結果は肥満では量的診断のみならず質的診断が重要であることを示唆するといえます。
同じ検討を小児肥満について行いました。ここで小児における合併症を表7に示すように定義しました。コレステロール値は200r/dl以上、中性脂肪は150r/dl以上、HDLコレステロールは40r/dl以下、GOT35以上GPT40以上、収縮期血圧130oHg以上のいづれか1つ以上を有するものを合併症ありと定義しました。 合併症のない小児肥満の頻度を肥満度で分けてみた図8です。合併症のない小児肥満の頻度は肥満度40%以上の中等度肥満でも、72%、4分の3弱と成人よりもさらに高頻度です。そこで、肥満の質的異常を反映する指標について検討しました。
小児における内臓肥満の検出
内臓型肥満が腹部の出た体型に対応し、皮下型肥満が腹部よりは臀部や大腿部が大きいという体型の違いを反映することから、ウエスト/ヒップ比もある程度肥満の質的な差異を示すものと考えられます。そこで小児肥満者と非肥満者において男女別、年齢別のウエスト/ヒップ比を検討したのが図9です。非肥満者では年齢と共にウエスト/ヒップ比は低下してきます。ところが肥満者では男女ともにその低下の度合は弱く、肥満者においてウエスト/ヒップ比が高いままでした。
次にAbdominal Fat Indexについて示します。この方法は松戸市立病院の鈴木と千葉大学医学部第二内科によって開発されたもので、腹部エコー法によって内臓脂肪を検出する方法です。腹壁正中部でプローブを縦操作し、図10に示すような像を得ます。図の最上段は腹壁、また肝の上面と腹壁の中間にあるのが白線(Linea alba)です。腹壁から白線までが皮下脂肪であり、Sで示します。白線から肝の上縁までが腹膜前脂肪であり、Pで示します。このSの幅の最も薄い部位と、Pの幅の最も厚い部位を計測し、この比をAbdominal Fat Index(AFI)と定義します。
また、肥満の質的診断として、ウエスト/ヒップ比(WHR)をAndersonの方法で、AFIをすでに述べた腹部エコーによる鈴木らの方法で測定しました。以上のような5つの指標を、小児肥満において合併症の有無とでわけて比較しました。小児肥満においても当然のことながら高度肥満群で合併症の多いことは明らかであります。ところが、肥満度が20%以上40%未満の軽度肥満群では図13に示すように合併症のない群と合併症のある群では肥満度、Fat%すなわち体脂肪率、BMIに差異を認めません。
結論として肥満の質的変動すなわち内臓型の肥満の検出には、肥満度、BMI、体脂肪率よりもウエスト/ヒップ比と、AFIの測定が小児でも重要であると考えられました。 すなわち、小児肥満の多くは皮下型と考えられて参りましたが、今回の検討で小児にも内臓型の肥満があると推測されました。今後は、第一に小児のAFIとCTとの関連、第二に小児のAFIと肥満の予後との関連を明らかにする必要があります。第三に脂肪分布と代謝変動の小児における特徴をとらえる必要があります。 小児肥満の遺伝子解析 さて、本学会のメインテーマ「DNAが開く臨床検査」にちなみ肥満症におけるDNA解析についての私共のデータを述べます。肥満症においては従来そ の成因として過食や食行動異常、環境などの要因が強調されてきましたが、近年脂質関連遺伝子の関与が推測され始めています。ob遺伝子と呼ばれる肥満関連遺伝子の産物であるleptin、またneuropetideY、あるいは 3-adrenergic receptor( 3受容体)などが肥満と関連すると考えられています。このうち 3受容体について示します。アドレナリンなどのカテコラミンが脂肪を分解することが知られています。このカテコラミンが脂肪を分解するときはまず脂肪 細胞の受容体に結合する必要があります。 このときにカテコラミンを結合する受容体が 3受容体であり、この受容体は褐色脂肪細胞や内臓脂肪細胞に多く分布しているとされています。正常では 、64番目のアミノ酸はトリプトファンでDNA配列はTGGですが、これがCGGに変異をおこしてアルギニンに置換されている異常をもつ受容体が1995年 に発見されました。
そこで日本でもこのような変異がどの程度あるかということを、肥満者と非肥満者で比較したのが表9です。これは東京大学門脇らとの共同研究で、白血 球から分離したDNAを解析したデータです。館山市の小児肥満者におけるこの遺伝子変異の頻度は、非肥満者では15%でしたが、肥満者では37%と有意に高頻度でした 現時点では、肥満と遺伝子との関連はわずかしか分かっていません。しかし今後は肥満も遺伝子異常という観点からのアプローチがなされる時代になると思われます。 |
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【おわりに】 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
発表した内容は第45回日本臨床衛生検査学会・学会長講演の内容です。 本研究にご指導、ご協力いただきました済生会船橋済生病院長・篠宮正樹先生に感謝申し上げます。 |
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【文 献】 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
1) 梅園 忠、伊藤 峻、金子富夫、高橋金雄、白幡もも子、齋藤 康、熊谷 朗:館山市における小児肥満の疫学調査(第1報)−小児肥満の程度と発生頻度について−
肥満症研究会誌 5:1-5、1980. 2) 伊藤 峻、金子富夫、梅園 忠、高橋金雄、宮崎静江、白幡もも子、齋藤 康、熊谷 朗:館山市における学童期肥満対策の現状とその効果 第2回肥満研究会記録 pp107-109,1982. 3) Tokunaga K,et al.:A novel technique for the determination of body fat by computed tomography. lnt J Obes 7:437-445,1983 4) 早川美重子、梅園 忠、本橋 仁、鈴木一夫、和田昭子、高橋金雄、鈴木 勝、齋藤 康:館山市における肥満児の疫学 第3回肥満研究会記録 pp65-66,1983. 5) 松沢佑次、木原進士、上山柘也、金井秀行、松原謙二、小畠隆司、川本俊治、中村 正、野崎秀一、藤岡滋典、中島忠久、亀田 芳、徳永勝人、垂井清一郎、石川勝憲、首藤弘史:内臓脂肪増加型肥満の診断法 第6回日本肥満学会記録 pp62-64,1985 6) 梅園 忠、田村邦弘、高橋金雄、篠宮正樹、神崎哲人、白井厚治、齋藤 康、吉田 尚 小児肥満における肝機能異常 第6回日本肥満学会記録 pp235-236,1985. 7) 和頴美和子、篠宮正樹、齋藤 康、吉田 尚:白浜町における過脂肪児の疫学 JJPEN 8:651-652,1986. 8) 梅園 忠、田所直子、神崎哲人、篠宮正樹、白井厚治、齋藤 康、吉田 尚:過脂肪児における肝エコー所見とその経年変化について第7回日本肥満学会記録 pp88-96,1986. 9) 篠宮正樹、齋藤 康、吉田 尚、梅園 忠、和頴美和子:小児肥満の成人への寄与について 第7回日本肥満学会記録 pp157-58,1986. 10) 動脈硬化症の一次予防に関する研究:厚生省心身障害研究 昭和51年度小児肥満性疾患(臓器系)研究班研究報告書3 11) 宮崎静江、小原玲子、梅園 忠、篠宮正樹、齋藤 康、吉田 尚:過脂肪児出現頻度の地域差の影響を及ぼす因子について 第8回日本肥満学会記録 pp126-127,1987 12) Anderson, AJ et al: Arteriosclerosis 8:88,1988. 13) 金子富夫、和頴美和子、梅園 忠、小原玲子、宮崎静江、高橋金雄、篠宮正樹、神崎哲人、石川 洋、白井厚治、齋藤 康、吉田 尚:過脂肪児におけるウエスト/ヒップ比 第6回肥満治療研究会講演集 pp13-14,1988 14) 梅園 忠、和頴美和子、小原玲子、宮崎静江、高橋金雄、篠宮正樹、白井厚治、齋藤 康、吉田 尚:過脂肪児におけるウエスト・ヒップ比 第9回日本肥満学会記録 pp73-75,1988. 15) 鈴木良一、渡邊聡枝、秋山一秀、千葉とも子:超音波診断装置を用いた体脂肪分布の推定とその臨床的意義 −腹壁脂肪指数(AFI)の考案−日本超音波医学 会講演文集、pp633-634,1990. 16) 白井厚治、篠宮正樹、齋藤 康、吉田 尚:分担研究:小児期の成人病危険因子の実態把握に関する研究報告書「小児成人病およびその危険因子の発生年齢に関する疫学調査」1990年 17) Suzuki R et al.,Abdominal wall fat index,estimated by ultrasonography,for assessment of the ratio of visceral fat to subcutaneous fat in the abdomen. Am J Med 95:309-314,1993. 18) Yoshida T,et al.:Mutation of 3-adrenergic recepter gene Trp64Argmutation is over represented in obese women:effects on weight,BMI,abd ominal fat,blood pressure and reproductive history in an elderly Australian population. Diabetes45:1358-1363,1996. |
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研 究 |
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LDH活性阻害を呈したLDH結合性 免疫グロブリン血症の一症例について |
帝京大学医学部附属市原病院中央検査部 高階成実 津村真由美 上野芳人 三橋裕行 桑田昇治 木野内 喬 菅野 勇 |
Key words: LDH結合性免疫グロブリン、LDH活性阻害 |
乳酸脱水素酵素(lactate dehydrogenase,EC1.1.1.27;LDH)は、解糖系酵素であり生体内に広く分布しており、そのアイソザイムパタ−ンの分析は、由来臓器の推定や病態の経過観察に用いられている。 LDHに免疫グロブリンが結合した症例では、LDHのサブユニットと、免疫グロブリンの種類も異なることが知られている。今回われわれは、LDHに免疫グロブリンが結合し、LDH活性が異常低値を示した症例を経験した。 |
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【症 例】 |
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症例は62歳の男性。健康診断にて免疫学的検査法による便潜血反応が陽性で、血液検査で貧血を指摘された。消化管出血の精査目的で当院を1990年に受診し、横行結腸癌と診断され、左半結腸と盲腸の切除術が施行された。その後、抗癌剤(ピリミジン代謝拮抗剤)のフルツロン投与を受け、経過観察のため定期的に通院している。この投薬は、手術の4年後(1994年)以降は中止されている。 初診時のLDH活性値は332U/l(Wroblewski−La Due法、基準値140〜360 U/l)と基準範囲内であったが、手術2年後には245 U/lと活性が低くなり、10年後 の2000年にはLDH活性値が7 U/lという異常な低活性を示した。 |
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【方 法】 |
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【結 果】 |
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表1に初診時からのLDH活性値を示した。初診時である手術前の値は、Feが34 g/dl、血色素量が12.7g/dlと低く、貧血を呈しているが、その他の生化学および腫瘍マ−カ−のデ−タに異常はなく、LDHも332 U/lと基準範囲内であった。しかし、手術後にはLDHが245 U/lと低下し、4年後から10年後(2000年)にかけて30 U/l以下の異常低活性を示した。
2000年のLDH値が7 U/lを示した患者血清のアイソザイムパタ−ンは、LDH 1、2、3域には活性帯がみられず、LDH 4の位置付近から陽極にかけてブロ−ドなバンドが検出された。また、患者の赤血球を生理食塩水で洗浄後、溶血させた試料のアイソザイムパタ−ンは、LDH 1、2、3にバンドが見られ、正常パタ−ンであった。
LDHマ−カ−、正常プ−ル血清、新鮮正常血清および患者赤血球溶血試料に、患者血清をそれぞれ混合して電気泳動を行ったところ、全ての試料でLDH 1〜5分画は消失し、LDH 4の位置付近のみブロ−ドなバンドを示した。
4.患者血清との混合によるLDH 活性(表2) 表2に示すごとく、患者血清と各試料との混合後のLDH活性値は、各試料とも低活性を示し、8.0〜17.5%の残存活性であった。このことから、患者血清の添加により、正常であった血清中のLDH活性が阻害されていることが強く示唆された。
5. 患者血清の精製IgGとの混合試験(図3) 精製した患者IgGを、LDHマ−カ−と正常血清のそれぞれに添加して電気泳動を行った。各試料とも、添加前は通常の5分画が出現していたが、患者IgGを添加したことにより、図2で示した結果と同様に1〜5分画は消失しブロードなバンドを示した
6. 免疫電気向流法(図4) 患者血清に、抗IgA,IgM,IgG,および 、 の各抗体で反応させ、免疫電気向流法による酵素結合性免疫グロブリンの検出を行った。図に示すごとく抗IgG、抗IgAおよび抗 との反応性が認められたことから、IgG、IgA― 型の複合型が同定された。 |
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【考 察】 |
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LDHは、電気泳動法により、通常5分画に分離されるが、1967年にGanrot2)が異型のアイソザイムパタ−ンを呈した症例で、LDHとIgAとの結合を同定したことに始まり、LDHと免疫グロブリンとの結合した症例の報告は多い。そのなかで、杉田3)の報告では、LDHに結合する免疫グロブリンのH鎖の種類にはIgAは6例、IgGは4例、IgAとIgGの混合型は1例であり、IgA結合例のすべてが、 型であったと報告している。また、長嶺4)の報告では、LDH結合性免疫グロブリンにはIgA、IgG、IgM、IgA+IgG、IgA+IgG+IgMがあり、その頻度はIgAが64%と多く、L鎖ではIgAとの結合では 型が95%と多く、IgGとの結合では 型は58%、 型は27%、 + 型では15%とその種類も多様であると報告している。さらにLDH結合免疫グロブリンの疾患別の分類では、IgA結合例では循環器疾患、肝疾患、悪性腫瘍が多く、IgG結合例では肝疾患、自己免疫疾患、悪性腫瘍が多く、IgA+IgG結合例では悪性腫瘍が多いと報告されている4)。われわれの症例では、IgAとIgGの混合型であり、横行結腸癌であったことから、前述の報告例と比較すると典型的な悪性腫瘍パタ−ンに分類される。 しかし、杉田3)の報告ではLDH結合免疫グロブリン症例のLDH活性値は、全例とも正常値を越える高活性例である。LDHと免疫グロブリンとの結合により、血清LDH活性は高値を示す症例が多いが、LDH活性を低下させる症例も報告されている5〜11)。 低LDH活性を示した場合、遺伝的欠損症であるか、阻害または失活因子の存在、薬剤の投与により低値を示す可能性が考えられる。本症例では横行結腸癌と抗癌剤投与という二つの因子が存在しているが、手術前のLDH活性値は正常であり、悪性腫瘍を切除した後も低LDH血症がみられ、しかも抗癌剤の投与が中止された以後もLDH活性値は正常に帰していなかった。よって薬剤投与が原因で、LDH活性阻害因子である免疫グロブリンが産生された可能性は低いと考えられる。 しかし、悪性腫瘍と阻害因子の発現・産生との関係については不明であり、われわれが調査した範囲では明らかな報告がなかった。 |
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【まとめ】 |
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1.本症例は、血清LDH活性が異常低値を示しLDHアイソザイム分析では5分画のバンドが消失したLDHアノマリ−を呈した。 2.本患者血清と正常血清との混合試験では正常血清のLDH活性が著しく阻害された。しかし、本患者赤血球中のLDHアイソザイムは正常パタ−ンを示し、遺伝的欠損症は否定された。 3.患者IgG試料との混合実験と免疫電気向流法による結合性免疫グロブリンの検索から、本症例はIgG、IgA− 型の複合型と同定され、これらの免疫グロブリンがLDH活性阻害因子であった。 4.本症例は大腸癌の切除後の10年間に、血清中LDHが徐々に低値を示してきた症例である。また、この期間に抗癌剤投与は中止されており、抗癌剤投与によるLDH活性阻害免疫グロブリンの発現および産生はないと考えられる。しかし悪性腫瘍と阻害因子の発現・産生との関係については不明である。 |
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【文 献】 |
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1)加野象次郎:免疫電気向流法.新版電気泳道実験法,213〜219,分光堂,1989. 2)Ganrot PO:Lupoid cirrhosis with serum lactic acid dehydrogenase linked to an -A immunoglobulin.Experientia 23:593,1967. 3)杉田収:LDH結合性免疫グロブリンに関する研究.新潟医学会雑誌 97:246〜261,1983. 4)長嶺光隆:LDH結合性免疫グロブリン.臨床病理特集増刊 75:75〜85,1987. 5)Peel,E.L:An LDH isoenzyme anormaly.J.Clin.Pathol. 22:746,1969. 6)山城明子:血清LDH活性を阻害した患者血清因子の検索.臨床病理 40:970〜976,1992. 7)Nagamine,M:Serum inactivator to M subunit of lactate dehydrogenase isoenzymes.Clin.Chim.Acta. 50:173〜179,1974. 8)Tetsuo Hirano,et al:An immunogloblin Ginhibiting lactate dehydrogenase activity.Clin. Chim. Acta. 159:17〜25、1986. 9)中山年正,他:血清LDH安定性異常を示した2例の分布.医学のあゆみ 90:85〜88,1974. 10) Masato Maekawa,et al:Lactate Dehydrogenase inhibition by immunoglobulin G in Human Serum.Clin.Chem. 32:1347〜1349,1986. 11)Kayoko Sudo,et al:A Case of immunoglobulinGconjugated with lactate dehydrogenase,producing both loss of enzyme activity and anabnormal isoenzyme pattern.Clin.Chem.32:1420〜1422,1986. |
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研 究 |
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当院の時間外微生物検査の現状 |
浦安市川市民病院 ○石川 恵子 木村 英樹 |
はじめに | ||
感染症の診断・治療のために行われる微生物検査において、臨床に役に立つ結果を報告するためには24時間体制で緊急検査としての対応が望まれる。しかし、人的、経済的などの理由から微生物検査を緊急検査として対応している施設は少なく、臨床側でも時間外ということで検体を提出しなかったり、また提出された検体を保存し微生物担当者の勤務を待って行っているのが現状である。しかし、それでは起因微生物の検出の時期を逸したり、菌量が変動したりして正しい結果が得られない。敗血症や髄膜炎、重症肺炎や輸入感染症や食中毒などの緊急を要する感染症では迅速で正確な対応が必要不可欠である。 当院検査室では微生物担当以外の技師の協力により微生物検査を24時間体制で対応している。その現状を報告する。 |
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概 要 |
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公立 救急指定 感染症新法 第2種医療機関指定 病床数 340床 技師数 18名 微生物担当技師数 1.5名 専任1名、一般検査との兼任1名 (専任、兼任は1ヶ月ごとに交代) 微生物検体数 650件/月 勤務体制 勤務時間 8:30〜17:15 週休二日制 日直 土、日、祭 8:30〜17:15 宿直 準夜 17:15〜23:00 宅直(オンコール制) 23:00〜翌8:30 |
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微生物緊急項目 |
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培養検査 各種検体の培地への塗布 迅速抗原検査 便中ロタウイルス抗原 アデノウイルス抗原 A群溶連菌抗原 インフルエンザA型ウイルス抗原 その他として検査可能な技師にお願いしているもの グラム染色・抗酸菌染色鏡検(検討中) 血液培養のサブカルチャー RSウイルス抗原 |
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本来ならば微生物担当者による24時間体制が望ましいが2名では到底行えるものではない。微生物担当者以外の技師にも、日直・準夜・宅直時には緊急微生物検査を行ってもらっている。 緊急検査項目としてまず培養検査がある。提出された検体はなるべく早く培地へ塗布してもらっている。微生物検査室には時間外用マニュアルがあり検体別の使用培地が一覧表となっている。培地の保管冷蔵庫にはどこに何があるかが記載されており、またそれぞれの培地にも培地名が記載されている。炭酸ガス培養・微好気培養・嫌気培養はパウチ培養法により行っている。 塗抹検査については現在検討中である。積極的な技師は日頃よりグラム染色、抗酸菌染色についてトレーニングを行っている。 迅速抗原検査として便中ロタウイルス抗原、便・眼・咽頭などのアデノウイルス抗原、A群溶連菌抗原がある。 昨年秋には臨床側からの要請により、新たにインフルエンザA型ウイルス抗原が緊急検査項目となった。そのため、10月末から11月にかけて講習会を3回行った。 講習会では微生物検査室で行われている迅速抗原検査の内容と意義についての説明をし、インフルエンザA型ウイルス抗原(FluAベクトン)・RSウイルス抗 原検査の実習と、今後、依頼の増える可能性のある抗酸菌検査(塗抹チールネルゼン染色・集菌法NALC NaOH法)について行った。迅速抗原検査は使用説明に従えばあまり問題なく行うことができた。抗酸菌検査についてはやはりなかなか難しいと思われる。今後の課題である。 平成12年4月から11月までの検査状況を表1に、インフルエンザ抗原を追加した平成12年12月から平成13年3月までの検査状況を表2に示した。当院では微生物検査も緊急検査として定着し、ほとんど毎日のように検体が提出されている。インフルエンザA型ウイルス抗原検査は今シーズン、ルーチン検査を含めて約200件(陽性率18.9%)を行ったが、その中の34件(陽性率24.3%)が時間外に提出されたことになる。 培養検体の診療科別件数は小児科入院が236件と最も多く小児の急性感染症が多いものと考えられる。検体別では糞便が最も多く次いで咽頭粘液であった。 血液培養は自動機器に入れるだけであるが同時にIVHカテーテルが提出されることがあった。(表3)
土曜日 準夜帯 19:00 渡航後下痢症の23歳男性が当院救急外来を受診準夜帯勤務技師(生化学担当者)が糞便培養を行った。その後、微生物担当者にその旨を電話連絡、翌日、日曜日に微生物担当者が出動しShigellaが疑われるコロニーが見られたため同定・感受性検査を行った。翌日月曜日9:00 Shigella flexenei2aとの同定と感受性結果を担当医に報告、保健所に届出となった。 宿直が対応してくれたため微生物担当者は土曜日に出動することなく日曜日に1時間程度の勤務で月曜に報告ができた。
水曜日 準夜帯 21:00 急性化膿性髄膜炎を疑う1歳女児が緊急入院 白濁した髄液が提出された準夜帯勤務技師(血清輸血担当者)がマニュアル通りに塗抹、培養を行い、グラム染色によりグラム陰性桿菌が検出され直ちに担当医と微生物担当者に連絡をとった。その後微生物担当者が出動し(21:30)、スライディクスメニンギートキットにより、b型インフルエンザ菌抗原が陽性となったため報告した。 |
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まとめ |
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当院ではここ数年の間に輸血検査の導入や採血業務、業務改善のためのシステムの構築など検査室内での変革が進み、新たなる技師のあり方が問われている。その中でどのようにしたら臨床に役に立つ検査室となっていけるのかを模索してゆかなくてはならない。微生物検査室においても院内感染対策に関する業務やサーベイランスなど業務内容は増えている。一方では保険点数の削減のため経済効率を考えた業務内容の見直しが必要である。各種迅速法・塗抹検査の積極的な導入、起因菌として意味のない菌種の同定感受性検査の削減、24時間検査体制など検討してゆかねばならない課題である。 時間外に提出される検体はルーチン検体に比べて起因菌陽性率が高い。時間外検体こそが最も検査の必要な検体であり、日頃、ルーチン検体の中に見られる起因菌とは到底考えられないような菌種の同定・感受性検査を行っているよりも、より重要である点をもう一度考え直してみよう。微生物担当以外の技師の中には忙しいのに微生物などやりたくないという声も一部には聞こえてくる。専門化が進んだために他の技師に任せることに抵抗感のある微生物担当技師もいるだろう。しかし、他の技師を巧く指導してゆくのが専門技師としての力量ではないであろうか。不慣れなもののやる検査である点は大目に見るだけの心の余裕がほしい。少し違ったところがあったとしても文句をいうのではなく「検査をしてもらって非常に助かった。迅速な対応のおかげで患者の状態も改善し臨床側も大変喜んでいる。その上でこの点を改善してくれるともっとよかった」と伝える。常に感謝の気持ちを持ってコミニュケーションを十分に取りながら努力してゆけばおのずと結果となって現れてくるであろう。 1.中村良子ほか:緊急微生物検査の進め方Medical technology Vol27.No3 1 999 2. 中村良子ほか:感染症の微生物検査 日本臨床微生物学会 |
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資 料 |
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検査収支管理の一方法 |
亀田総合病院 臨床検査室 庄司 和行 |
key words 収支 費消額 単価設定 増収貢献度 |
【はじめに】 | |
検査室収支管理の必要性が問われて久しいが、診療報酬算定の激変から、真の稼働収入計算方法はありえないのではないかと思えてならない。逆になぜそこまで必要とするのか、根拠すら曖昧と感じ取れる。 正しい収支報告が出来ない検査室は滅亡の危機にと、厳しい言葉が飛び交っているが現在病院検査室の平均利益率30%・収支比率8.8%は、今だ収益性の高さを維持していると言える。ではなぜ存亡の危機なのか、自分なりに解いてみると、「病院検査室の運営方法を変えれば、より収益率が高くなりますよ」この売り言葉に行き着く。これを思考してみると最大要因の一つは、国の認可を取った試薬包装当たりの価格に対し、使用量の増加が、大きく納入価の差に影響する、価格設定が原因と思えてならない。 そして、これに対応するには、検査項目一つ一つの原価計算による単価設定であり、言葉を変えれば正確な支出算定こそ重要であると言いたい。当然細部に渡る試薬価格交渉は必然ではあるが。 そこで、当院で行っている収支算定方法を紹介させていただき、一つでも参照していただければと想い紙面にしてみた。 |
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【方法と結果】 | |
1.収入算定 1)T方法:病院全体の診療報酬から検査室の収入を計算する。 U方法:検査項目件数に診療報酬点数をかけて計算する。 z利点と欠点:T方法は、その施設における検査室稼働が完璧に算定されるが、包括等から真の稼働とは言えない。又、施設特有であって他の施 設との比較が出来ない。 U方法は、施設内の診療報酬との相関は出来ないが、他施設や登録衛生検査所との比較は出来る。 2.支出算定:人件費の査定方法(非採算性部門)の違いと設備費・光熱費等が求めにくい点を除けば、正確な算定は出来る。 3.当院収支例:収入計算はU方法採用 (別表A) ◇ 試薬・消耗品費計算方法:費消額=先月棚卸額+当月購入額―当月棚卸額 ◇ 20.9円計算方法:(管理事務人件費+総体的使用機器メンテ費+システム費+光熱費+設備費)検査総件数 ・管理事務人件費:技師長・事務員等 ・複数の検査項目に関わる試薬代振り分けは、検査件数にて分配。 ◇ 総合原価=原価+33.8円=単価 ・臨床化学平均対点数原価率=24.1% (4,030,392+7,357,283)稼働点数ラ10 ・ 臨床化学平均原価=52.3円 (4,030,392+7,357,283)臨床化学件数 (別表B) 1) 臨床化学の項目について計算方法例を表示したが、同様に各部門毎に検査項目を算定し項目単価を設定する。 2) 他検査項目の当院単価例(円表示) @尿沈査:222.3 血算:158.9 T-CHO:42.8 AST:37.6 AMY:78 CRE:64.7 UA:41.9 GLU:63.7 CRP:77.6 HbsAG:376.2 HCV:810.3 AFP:695.2 CA19-9:811.8 FT3:687.8 インシュリン:245.6 フェニトイン:1626.9 心電1603.3 脳波:2806 心エコー:5782.5 4.結果:収入をU方法にて算定し、年一回T方法も併用して行った。数年間の平均としての結果だが、U方法ラ6.5割=T方法の計算式が1998年においては成り立った。もちろん診療報酬が変更されれば掛け率は当然変化するが、U方法の6〜6.5割の推移はしばらく変わらないと考える。 |
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【まとめ】 | |
診療報酬は病院施設の届出の違いから、正確な検査室収入算定は不可能であることは周知の事実である。それを敢えて判断料T・Uの取り分を決めたり、包括検査は点数の按分とか原価分配を試みたり、まして損益分岐点まで求める事は、自己満足は出来るが正確な値で無い以上、算定した数値を生かす手段は低いと言える。 今なすべきは、検査室が病院全体の収入に如何に貢献したか、内容の認識評価を高める努力をすべき時ではないだろうか。 検査室全体の稼働は、「病院全体の増収貢献度+検査実施料」そして重要なのは院内で測定している検査項目全ての単価設定をするべきと考える。当然単価のより安価にする努力は不可欠であるし、方法論は多岐にわたって存在する。 例えば、試薬の特徴から再検率等の測定回数の抑制・試薬消耗品等の技師側での価格交渉・人件費の削減(新人の雇用促進等)等細かく上げればいくらでも在り得る。 算定は簡単でないが、検査の収支が問われる以上、技師の糧である検査項目の単価がいくらなのかは、知識として持っておくことは義務ではないだろうか。支出の細部における正確な算定資料作成と検査項目の単価を安価にする努力作業こそ、いま必要なことがらの一つと言い切りたい。 |
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施設紹介 |
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日本医科大学付属千葉北総病院 |
千葉北総病院は、千葉ニュータウンの一画の広大な敷地(東京ディズニーランドとその駐車場を合わせた面積に匹敵するそうです。)に平成6年1月に開 院し、現在は、最寄り駅に病院の名前がついた北総・公団線の「印旛日本医大」駅があります。 病院の開院とともに、周辺の住宅地の開発が行われ、商業施設も整いまちびらきが行われた感があります。 病院は緑に囲まれた広大な敷地の中に、A棟(入院棟)、B棟(外来棟)、C棟(画像診断などの棟)、D棟(検査などの棟)、E棟(エネルギー棟)の5棟で構成されており、A棟からD棟までは幅6メートルのホスピタルストリート(廊下と呼ぶには広すぎます・・・)で結ばれています。一番長いホスピタルストリートは直線で140メートル続き、壁には絵画や小児患者の書いたと見受けられる絵が飾られており、所々に椅子も置かれいます。まるでホテルの一角にいるような錯覚に捕らわれます。飯野技師長の従来の病院のイメージをとりはずすコンセプトで作られているという言葉に十分頷けるアメニティー空間が広がっています。 診療科は、内科・外科をはじめ、救命救急部など全19科、病床数600床を擁しています。普通の病気を診る総合診療部門のほか、高度医療を行う総合病院を目指しているとのことです。また、成田空港に近い地理的条件を考え、国際的な医療や首都圏の災害の際にも対応できる病院づくりを行っているそうです。敷地内には、研修センター、備蓄倉庫、ヘリポートの設備も整っていました。 また、開院時から、オーダーリングシステムを採用しており、一日の外来患者数は1300〜1800名で検体検査依頼件数は入院患者を含めると1000件以上にものぼるとのことでした。外来患者の採血は、病院1階の総合診療部門の一角に採血室があり、一日平均130〜140名の採血を看護婦さんがされているとのことです。 さて、検査部ですが、大きくは中央検査室と生理機能検査センターに分けられます。 基本的に検体検査は委託検査とし、輸血検査、微生物検査、生理検査は病院職員が実施する形態をとっているとのことでした。 中央検査室は、C棟の2階に位置し、病院のエントランスホールよりエスカレーターで上り、直線で140メートル続くホスピタルストリートの途中が入り口となっています。 委託の検体検査は、大手企業2社によって共同運営がなされており、2ヶ月に1回院内ラボ会議を開催し連携を図っているそうです。検体検査室は広く、生化学、免疫血清、血液などのルーチン検査は、検体を各種自動分析装置にかけ結果を30分程で報告しています。また、日当直もあり 緊急検査などに1人で対応しています。 輸血検査室は、3名の技師で輸血検査や輸血用血液製剤の管理を担当されています。 また、中央検査室の隣には、検査部とは別に病理部があり、検査技師が6名配属されているとのことでした。 病院職員として意識改革と向上心の啓発として、研修会、勉強会等への出席について挙げられました。中央検査室の一角には、技師の方々の専門分野の認定証が額に入れられ多数飾られている様子からも技師の方個々の努力が伝わってきました。また、病院主催の公開講座には積極的に参加をしているそうです。 今後の検査部の将来像としては、日当直体制の充実化、オーダーリングシステムの簡易化を図りたいとの事でした。現在、日当直は1名で行われているそうですが、検査項目の充実を図るためにも複数体制を整えていきたいと抱負を語られました。 最後になりましたが、お忙しい中、長時間にわたりお話を聞かせたいただきました飯野技師長はじめ、快く見学させてくださいました検査スタッフの皆様にお礼申し上げます。ありがとうございました。 【千臨技編集委員】 小林 美智子(千葉県赤十字血液センター) 柿沼 豊 (千葉市立海浜病院) |
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