千臨技会誌 2003 No.3 通巻89 |
研 究 | 心肥大における加算平均心電図の意義 | 千葉大学医学部附属病院 検査部 浅野 美紀,松本 泰典1),多田 美和,高橋 章予, 竹田 祥子,山本 修一,谷 明子,真々田賢司, 大澤 進,米澤 真頼,野村 文夫2) 千葉大学医学部附属病院第三内科1) 千葉大学大学院医学研究院分子病態解析学2) |
研 究 | インフルエンザウイルス迅速診断キットによる 検査成績とその臨床的背景 |
船橋市立医療センター 検査科 木 村 真 弓 |
施設紹介 | 千葉市立青葉病院 |
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研 究 |
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心肥大における加算平均心電図の意義 | |
千葉大学医学部附属病院 検査部 浅野 美紀,松本 泰典1),多田 美和,高橋 章予, 竹田 祥子,山本 修一,谷 明子,真々田賢司, 大澤 進,米澤 真頼,野村 文夫2) 千葉大学医学部附属病院第三内科1) 千葉大学大学院医学研究院分子病態解析学2) |
【はじめに】 | ||||||
加算平均心電図による心室遅延電位(LP)は心筋梗塞における心室頻拍(VT)との関連性については多くの報告がある。心筋梗塞例では、LPが陽性であればかなり高い確率でVTが発生すること、逆にLP陰性であればVT発生の確立は低いことが知られている1)。 陳旧性心筋梗塞や心筋症における梗塞心筋や障害心筋では、正常の心室興奮より遅れて出現するLPは緩徐伝導路を反映し、緩徐伝導路を介したリエントリーが形成されリエントリー性心室性不整脈の原因となるとされている。 また、比較的予後良好とされている心肥大においても、肥大型心筋症では突然死の原因となる心室性不整脈と関与することが知られているが、LPと心肥大との関連性は十分知られていない2),3)。 今回、心肥大例に加算平均心電図を施行し、心室頻拍との関連について検討したので報告する。 |
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【対象】 | ||||||
当院にて心エコー上12?以上の左室壁肥厚の認められた患者21例(男性16例、女性5例、平均年齢64.1歳)、基礎疾患の内訳は肥大型心筋症15例、高血圧性心疾患5例、心Fabry病1例とした。心筋梗塞などの虚血性心疾患の合併例は除外した。 |
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【方法】 | ||||||
記録機はMarquette社製 CASE16を使用し、Simson法に準じ、誘導はX、Y、Z誘導をしたvector magnitude波形、ノイズレベル0.3 V以下、R波同期(トリガー)、加算回数は250心拍、40〜250Hzのband
pass filterを用いた4)。 判定には、Denesの基準を用い、40HzのHPF使用時に、filtered QRSの幅(fQRS)≧114ms、QRS終末部における40μV未満の電位の持続時間(LAS40)≧38ms、filtered QRS の終末部40msecの平均電位(RMS40)<20 Vのうちいづれか二つを満たした場合陽性とした。 全例に24時間ホルター心電図を施行し、3連以上のVTを有する群(VT群)と有さない群(非VT群)で比較検討した。また、LPの有無と心エコーによる心機能との関係、造影CTによって検出される心筋の繊維化の有無とLPとの関係についても検討した。2群間の比較検討には、t-検定を使用し有意水準5%未満(p<0.05)を有意差ありとした。 |
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【結果】 | ||||||
1) 肥大疾患別のLP陽性率 対象とした21例について肥大疾患別のLP陽性率を調べたところ、肥大型心筋症15例中4例(26.7%)、高血圧性心疾患5例中0例(0%)、心Fabry病1例中0例(0%)と症例数が少ないため十分な評価ではないが、肥大型心筋症においてのみLP陽性がみられた。 2) LPの有無における心機能(表1)
LPの有無について収縮率、拡張能、肥大の程度、肥大の部位、壁運動異常、流出路狭窄の有無を比較したところ、両者の心機能に明らかな差は認められなかった。 3) VT群と非VT群のLP陽性率(表2)
f-QRS、LAS40、RMS40の各パラメータについてVT群と非VT群のLP陽性率を比較したところ、各パラメータにそれぞれ有意差は認められないものの、VT群で8例中3例(37.5%)非VT群では13例中1例(7.7%)がLP陽性とVT群でやや高い傾向がみられた。 4) 心筋の繊維化の有無におけるLP陽性率(表3)
心筋の繊維化の有無におけるLP陽性率についてf-QRS、LAS40、RMS40各パラメータにおける比較を行ったところ、各パラメータにそれぞれ有意差は認められないものの、心筋の繊維化を認めた(+)群は5例中2例(40%)、認めない(−)群では16例中2例(12.5%)がLP陽性で、心筋の繊維化を有する群で高い傾向がみられた。 |
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【考察】 | ||||||
加算平均心電図により検出されるLPは、主に心筋梗塞などの虚血性心疾患患者における持続性心室頻拍の素地となる基質の存在を診断するのに有用であるとされており、多くの検討がなされているが、肥大型心筋症などの他の心疾患についてはあまり知られていない5),6)。 心肥大では大部分の患者が、無症状かあるいはわずかな症状を示すだけのことが多く、一般的に予後は良好だが、肥大型心筋症などにおいて心室性不整脈が出現し突然死を来たす場合があり、その予知は臨床上重要である。 Jean-paulらによる肥大疾患別のLP陽性率は、肥大型心筋症5〜20%、高血圧性心疾患1〜5%との報告があり、今回の検討でも26.7%と同様の結果が得られた2)。 また、LPは左室機能障害が高度な例によく検出されると言われているが、それとは独立した指標であるとの報告もあり、今回の検討でもLPの有無において心機能に明らかな差は認められなかった3),4)。 症例数が少ないことや左室肥大ではwide QRSである傾向がありLPが隠蔽される可能性があるため、明らかな有意差は認められなかったが、VT群や心筋の繊維化を有する群でLP陽性率は高い傾向が認められた。 このことから、心筋変性の強い心肥大においてはVTのリエントリーの誘因となる電気的緩徐伝導路が存在する可能性が示唆された。 心筋梗塞例と違い、LP陰性であればVT発生の確率が低いとは言えず、むしろLP陽性であった場合にVTなどの不整脈を考慮し、心機能検査やCTにおける評価を進めて行くといったスクリーニング検査として有用であると考えられる。 |
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【結語】 | ||||||
1) VT群と非VT群のLP陽性率は、VT群でやや高い傾向がみられた。 2) 心筋の繊維化のある群でLP陽性率は、やや高い傾向がみられた。 3) 加算平均心電図が非観血的・無侵襲でそのときに不整脈が出ていなくても、洞調律のままで評価できる点を活かし、心肥大においてもスクリーニングの一つとして有用であると考えられた。 |
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【参考文献】 | ||||||
1) 加藤貴雄:加算平均心電図法.不整脈:94-102,2000 2) Jean-paul fauchier et al:Time-domain signal-averaged electrocardiogram in nonischemic ventricular Tachycardia.PACE,vol.19:231-244,1996 3) A.Englund et al:Wavelet decomposition analysis of the signal averaged electrocardiogram used for risk stratification of patients with hypertrophic cardiomyopathy.European Heart Journal,19:1383-1390,1998 4) Simson MB:Use of signals in the terminal QRS complex to identify patients with ventricular tachycardia after myocardial infarction. Circulation 64:235-242,1981 5) 田中隆:心室遅延電位からの急性心筋梗塞に伴う心室頻拍の予知.日医大誌58:420,1992 6) 綱川宏,中山雅裕:心筋梗塞後の心室頻拍予知に対する加算平均心電図の有用性. 日本臨床53巻2号:136-144,1995 7) 小沢友紀雄:平均加算化心電図(レイトポテンシャルなどの心内微小電位の検出法).心電図のABC:220-222,1999 8) 加賀谷茂:平均加算化心電図.心電図・心機図検査の実際:187-188,1991 9) 磯貝京子ほか:肥大型心筋症におけるlate potentialによる持続性心室頻拍の予測について.日本臨床53巻2号:176-182,1995 |
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研 究 |
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インフルエンザウイルス迅速診断キットによる 検査成績とその臨床的背景 |
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船橋市立医療センター 検査科 木 村 真 弓 |
【はじめに】 | ||||||||
インフルエンザは、悪寒、全身倦怠、筋肉痛、関節痛、頭痛、咽頭痛などを伴った発熱を特徴とするインフルエンザウイルスに起因する呼吸器感染症であり、その進行が極めて早く、高齢者、小児、妊婦、呼吸器疾患者に時として重篤な合併症を引き起こすことから、迅速な診断と治療が求められている。インフルエンザウイルスはA型、B型、C型に分けられ、この中で病原性の強いA型・B型は毎年広範囲に流行を引き起こすことから社会的、経済的問題である1)。 近年モノクローナル抗体を利用した免疫クロマトグラフィー法や、酵素標識抗体を用いたサンドイッチEIA法によるインフルエンザウイルスの迅速診断キットが開発され、検査室レベルでの判定が可能となり20〜30分以内での迅速な病原診断が可能となった2)。 当センターでは2000/2001シーズンよりこれらの迅速診断キットによる検査を行い、その有用性が認められたので、2001/2002シーズン(以下昨シーズン)、2002/2003シーズン(以下今シーズン)における検査成績と臨床的背景についてまとめたので報告する。 |
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【対象と方法】 | ||||||||
対象は当センターをインフルエンザ様症状で受診し迅速診断検査依頼のあった患者で、昨シーズンは2002年1月21日から2002年3月17日の229人、今シーズンは2002年11月13日から2003年3月31日の510人とした。 検査材料は鼻甲介からの鼻腔ぬぐい液とし、インフルエンザ迅速診断キットはキャピリアFlu A,B(ベクトンデッキンソン)、インフルA・B−クイック「生研」(デンカ生研)、エスプライン インフルエンザA&B(富士レビオ)を用いた。キャピリアFlu A,Bおよびエスプライン インフルエンザA&Bは、インフルエンザAまたはBウイルスの核タンパクを認識する特異性の高いモノクローナル抗体を利用した免疫クロマトグラフィー法で、所要時間は15分程度であった。インフルA・B−クイック「生研」は、アルカリホスファターゼ標識抗体を用いたサンドイッチEIAで、所要時間は20分程度であった。 |
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【結 果】 | ||||||||
昨シーズンの陽性患者は1月21日より検出され、2月第1週、第3週にピークが見られた。一方今シーズンでは昨シーズンよりも6週間ほど早く陽性患者が検出され始め、1月第3週から2月第1週と、昨シーズンよりも早い時期にピークを迎えた。図2には陽性患者発生数の推移を示した。陽性患者の年齢分布は0歳から91歳で、A型陽性患者は5歳以下の小児が圧倒的に多く、次いで10〜30歳代で両シーズンとも患者数が多く、B型陽性患者は10歳以下に多く見られた(図3)。陽性患者の体温は36℃から41℃であり、38.5℃以上が昨シーズンでは79%今シーズンでは70%を占めていた。その分布を図4に示した。
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【考 察】 | ||||||||
国立感染症研究所の感染症発生動向調査報告によると、昨シーズンはA/ソ連、A/香港、B型の混合流行であり、今シーズンはA/香港、B型の流行でありA/ソ連型に関しては2003年第10週に滋賀県から1例が報告されたのみである。当センターでの検査結果は図1、図2に示すようにA型、B型両方で陽性患者がみられ、陽性者数のピークは昨シーズン、今シーズンとも、国立感染症研究所の報告と一致した。 インフルエンザウイルスは増殖世代時間がおよそ8時間で、1個の感染細胞は約100個のウイルスを産出するとされている。ウイルスにとって条件が整えば、24時間で100万個のウイルスが体内に増殖することになる。増殖ウイルスが10〜100万個に達すると悪寒、戦慄が出現すると言われており、したがって潜伏期間は1日程度となる3)。幼児ではインフルエンザに伴った脳炎、脳症が多発することが問題となっている。また、高齢者や基礎疾患を持つハイリスク群の患者では肺炎や筋炎などの合併症により重篤な経過をとり、死亡することもまれではない。 当センターで処方されている抗インフルエンザウイルス薬(タミフル;日本ロシュ株式会社)はノイラミニダーゼ阻害剤であり、感染細胞からのウイルス粒子の遊離阻害と、細胞外ウイルス粒子の凝集塊形成促進によりウイルスの増殖を阻止する。この薬剤は、体温が38度以上で7つのインフルエンザ症状(鼻症状、喉の痛み、咳、筋肉または関節等の痛み、倦怠感または疲労感、頭痛、悪寒または発汗)のうち2つ以上を有して、発症後36時間以内の16歳以上の患者を対象とした試験において、全症状回復までの時間で23.3時間の短縮、平熱までの回復時間で27.4時間の短縮が認められている4)。このことから、薬剤の適正な使用には早期診断による発症48時間以内の早期治療の推進が不可欠であると考えられる。検査結果を15〜30分以内に報告可能とする迅速診断キットの使用は、これらのより効果的な早期診断、治療を可能とし臨床成績の向上が期待できる。 インフルエンザウイルスは、発病後3〜5日間は分離され、乳幼児では1週間以上ウイルスが排出されることもある。昨シーズンにおける当センターの結果においてもインフルエンザの発症後48時間までの陽性率と48時間以降の陽性率の間には有意な差は認められず(P=0.7543)、非感染者への防御のためにも迅速キットによる検査を行うことは有用であると言える。 従来、インフルエンザの病原診断は患者の咽頭拭い液やうがい液からウイルスを直接分離同定することが基本とされ、検体を発育鶏卵羊膜腔や組織培養細胞に接種して培養し、増殖してきたウイルスの同定を行うが、特別な設備や技術が必要であり結果が出るまでには約1週間を要した。患者の血清診断は補体結合法(CF)、赤血球凝集阻止反応(HI)が用いられているが、いずれも急性期と回復期の抗体価の4倍以上の上昇をもって診断し、確定診断には2〜3週間を要する。 一方、抗ウイルス剤による治療が可能となった近年ではモノクローナル抗体を利用した免疫クロマトグラフィー法や、アルカリホスファターゼ標識抗体を用いたサンドイッチEIAによるインフルエンザウイルスの迅速診断キットが開発され、検査室レベルでの判定が可能となり20〜30分以内での迅速な病原診断が可能となった5)。 インフルエンザワクチンは小・中学生を対象に予防接種法に基づいて1962年から接種が義務化され、全額公費負担によって実施されていたが、1994年の予防接種法改正によって対象疾患から外され、接種費用も公費負担ではなくなっている。その後、1998年の冬には小児を中心に、翌1999年には高齢者を直撃、死亡者が相次いだことから予防接種法の改正が求められ、高齢者(65歳以上)およびハイリスク群といわれる60〜64歳の方々で、心臓、腎臓、呼吸器機能、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能に障害を有する場合を対象に予防接種費用は現行の全額自己負担から一部公費が充当され、負担の軽減が計れた。また、ワクチン接種による健康被害については、医療費や医療手当などの救済処置が公費によって行われている1)。 当センターでの陽性患者の年齢分布は0歳から91歳であり、低年齢者から高齢者まで幅ひろく感染していることがわかる。A型陽性患者は5歳以下の小児に圧倒的に多くみられ、次いで10〜30歳代で患者数が多くみられた。B型陽性患者は10歳以下に多く見られた。 インフルエンザで問題となるのは、小児でのインフルエンザに伴った脳炎、脳症が多発することであり、その致命率は約30%に及ぶ重篤な疾患である7)。このことから、高齢者だけでなく小児に対するワクチン接種の公費負担などインフルエンザ予防策が急務であると考える。 |
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【参考文献】 | ||||||||
1) ワクチンニュース「生研」:デンカ生研株式会社、平成13年6月号・11月号 2) 国立感染症研究所の感染症発生動向調査報告、第3巻 第44号・第4巻 第14号 3) 土橋佳子・他:インフルエンザ発症のメカニズム:臨床検査、139‐144,2002 4) 抗インフルエンザウイルス タミフル:医薬品インタビューフォーム:日本ロシュ株式会社、2002 5) 三田村敬子:インフルエンザの迅速診断:臨床検査、169‐173,2002 6) 森島祐子・他:インフルエンザワクチンの現状と課題:臨床検査、175‐178,2002 7) 森島恒雄:インフルエンザ脳炎・脳症の疫学と発症・病態、157‐161,2002 |
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施設紹介 |
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千葉市立青葉病院 |
6月3日の気温が30℃に迫り、夏の到来を感じる蒸し暑い日に、5月1日の移転・開院から1か月あまりと、まだ、慌ただしい時期ではありましたが千葉市立青葉病院を訪ねました。 青葉病院は、旧千葉市立病院の老朽化や、多様化する医療ニーズなどに対応するため、平成11年度から整備を進められ、所在地は旧市立病院の道路をはさんですぐ隣の、中央区青葉町に新設されました。 建物は免震構造であり、震度7以上の揺れにも充分耐えられ、そのほか耐震井戸、雨水再利用システム、太陽光発電の導入、廃熱エネルギーの利用など、災害時や、環境に配慮した設計となっています。取材の数日前のちょっと大きめの地震も「建物の揺れはごくわずかだった」と言われていました。また、病院の敷地内は公園のように緑が整備され、患者さんが面会の方と車椅子で散歩をされている姿も見る事ができました。 【新病院の特徴】 青葉病院の診療科は、以前よりより5科新設され計18科となり、病床数も385床と約4割増床されました。また、救急部が新設され、千葉市内の二次救急体制の強化がはかられたそうです。実際、開院から1か月あまりしか経過していないにも関わらず、救急車及び時間外患者数の来院数は、旧市立病院の2.5倍に増加したそうです。 また、血液疾患や、感染症、精神科合併症などの高度専門治療のほか、緩和ケア病床の設置、高齢化対策として在宅医療支援病床や、リハビリテーション施設の充実、老人性痴呆症の診療も行っているそうです。感染症病棟もあり、県内では3か所あるSARS対応病院の1つでもあります。 青葉病院の特徴のひとつに電子カルテの導入があります。これにより検査結果や問診、看護記録、処方などの情報や、エコー・内視鏡・放射線画像などの画像情報を一元管理し、従来の紙カルテより効率的に管理できるようになったそうです。実際、検査科からの検査結果で紙による報告書は、検体部門・生理部門ともに、特殊な場合をのぞき無くなったそうです。 検査科の人員は、森田検査科長を筆頭に、正職員15名、パート1名。部署別には生化・免疫・血液・一般・輸血で7名、病理2名、細菌2名、生理4名(含パート1名)、受付・採血1名で構成されているそうです。各部屋の配置は一階に、採血・採尿室や、生理検査部門が外来や、放射線部門との近くに配置されており、検体部門は2階にあって、採血・採尿室とはダムウエーター(検体搬送用のエレベーター)で結ばれていました。 まず、2階の検体部門の紹介です。生化・免疫・血液・一般・輸血の各検査部門はワンフロアで構成されていて、各部門及び採血・受付でローテーションを行っているそうです。 主な使用機器としては、生化:ALOKA APS3100、TOSHIBA TBA200FR、TBA40FR(夜間用)、ARKRAY ADAMSライン(血糖・HbA1C)、免疫:ABBOTT Axsym、一般:Bayer Cliniteck Atlas XL、Sysmex UF-100、血液:Sysmex XE2100、SP-100、コアグレックス800、輸血:オートビューシステム等が配置されていました。 検体は外来、病棟で発行されたバーコードラベルを貼付けた状態で、また一部救急外来、ICU等からはエアーシューターで検査室に送られていました。到着後、各検査機器にてバーコードで検体を識別し、測定の実施を行うわけですが、検査結果は報告書を発行するわけでなく、結果を確認後、電子カルテに登録という作業で報告が終了します。外注検査の結果もFDによる受け渡し、また、紙による報告書はスキャナーで読み込み後、電子カルテに登録するそうです。この過程は、夜間・休日も項目が制限されるだけで同様だそうです。 旧市立病院から引き続き、青葉病院も血液疾患の治療・移植に力を入れていくそうです。血液一般の検体数は約200件程度だそうですが、血液疾患患者が多いため、その1/4を鏡検しています。骨髄穿刺は月20件程度実施しているそうです。 輸血業務は青葉病院から、製剤の発注、管理、検査を検査科で一元管理しているそうです。オートビューシステムを導入し、自動化されていました。ただ、病院としての救急体制の強化や、血液疾患患者が多いため、平日の業務の増加とともに、夜間・休日等の輸血検査、払い出し業務が増加し、1人体制で行っている日・当直者の負担が増えているようでした。また、現在自己血の採取を、検査室と隣接している採血室で行い、管理しているほか、将来的にはフローサイトメトリーによる細胞検査や、培養等も実施できるように、スペースと器材を準備してあるそうです。 微生物検査室は、検体検査室の奥に二重扉と隔たれて配置されていました。感染予防のため、微生物検査室から空気が漏れないように、陰圧となっていて、フィルターを通して、外気に放出するようになっているそうです。主な設備として、全排気形のクリーンベンチや、血液培養装置Bact ALERT30、感受性や同定試験を行うWalk Away40SI、MIC-20000等が設置されていました。前に記したように感染症病棟が設置されていたり、院内の感染対策委員会への参加など青葉病院内で積極的に活動をなさっているようでした。 病理検査室は血液検査室と廊下を挟んで、設置されていました。また、病理検査室の一角は、手術室と扉一枚でつながっており、隣接した部屋で臓器のデジタルカメラによる写真撮影、切り出し、臓器コピー等の一連の作業ができるようになっていました。また、クリオスタットも設置されているため、手術室から提出された臓器等の処理は全てここで行えるようになっていました。 また、病理システムが稼働中で、一症例がなるべく1つの画面上で作業できるように工夫してあり、臓器画像、組織像、内視鏡写真、患者情報、病理台帳を簡単に引き出す事ができました。 採血・採尿室で検査科は受付がメインの仕事の様で、採血は看護師さんが主に行っているそうです。ただ、受付の合間できるだけ採血をするようにはしているそうです。2階の検体検査室の人員でローテーションしているようでした。 採血管の準備には、BC ROBOが設置されていました。 生理検査室では、心電図、ホルター心電図解析、呼吸機能検査や、心・腹部等のエコー検査、脳波検査を実施しているそうです。また、青葉病院に心臓カテーテル検査や、負荷RI検査の設備が出来た事から、それらの検査時に心電図モニターや圧測定の、出張検査も行っているそうです。検査結果は生理検査室も原則的に報告は電子カルテなので、ペーパーレスまたは、スキャナーで結果を読み込むそうです。脳波の様に容量の大きいものはMOディスクに記録を保存し判読医に渡すそうです。エコー検査室には、電子カルテ、生理画像端末、放射線画像参照端末が並んでいました。 最後に森田臨床検査科長に次のようなお話をしていただきました。 「当検査科も業務を開始して、早1か月が経過しました(6月12日現在)。開始早々は緊張の連続で検体、システム、機器操作に追われた日々だったと思います。それでも大きなミスもなくこれたのは、開院前後だけでなく、2〜3年前から夜遅くまで頑張ってくれた検査科職員のおかげと思っております。 青葉病院では電子カルテシステムを中心に、各部門システムが接続されており、検査科も検査機器が一新され検体系、生理検査系ともに各端末でオーダーや予約を確認し、検査結果を送信という形で報告するという、過去の検査業務を知る者としては想像のできない変化をとげました。しかし便利な反面、今までの顔が見えた臨床や他部門とのコミュニケーションが、システムによるネットワーク化や、病院の規模が大きくなったことによって、難しくなったのも事実です。今まで以上に積極的に外へ出ていき、臨床や他部門の声を聞き、患者さんへのサービス向上を図りたいと思っております。 当科も4月より1名の増員となりましたが、業務の拡大、夜間二次救急への対応などを求められ厳しい状況ではありますが、技師同士「和と協力」をもって対応していく所存です。世の中の流れは激変していますが、基本的な事である、臨床検査技師として患者さんの存在をいつも意識することを忘れず、業務を遂行していきたいと思います。」 最後に快く見学や撮影に協力してくださった検査室の皆さんにお礼を申し上げます。 (古賀智彦、福田憲一) |