千臨技会誌 2009 No.2 通巻109

みて見て診よう 検尿(蛋白尿と血尿)と超音波検査を, 旭中央病院 中央検査科
         関根 智紀
施設紹介 東京歯科大学市川総合病院           秦  暢宏
研究班紹介 情報システム検査研究班          秦  暢宏



みて見て診よう!
検尿(蛋白尿と血尿)と超音波検査を,みて,見て,診よう(4)
旭中央病院 中央検査科
 関根 智紀

【はじめに】
 検尿は,排尿困難な患者でなければほとんど無侵襲に検査が進められ,費用も低価格である.簡便な検査ではあるが,この検尿で発見される腎疾患は少なくない.例えば,lgA腎症においても健診の検尿異常から高率に見つけられたとする報告も多い.さて,早期に検尿によって異常を発見できれば,糸球体腎炎や糖尿病性腎症も早い時期に治療することが可能と考える.このような目的も含めて,検尿は職場や学校そして地域での健診にスクリーニング検査として用いられている.そして,日常診療においても腎疾患を疑ったら施行する必須な検査でもある.
 今回,検尿からスタートして蛋白尿と血尿を取りあげ,画像診断の超音波検査をからませて何がわかるのか?を考えてみたい.なお,“みて,見て,診よう”は,「みて=表面的な検査の入り口の情報」,「見て=検査を進めてみる」,「診よう=精密検査や病理の結果から得られる診断的なもの」のように思われがちであるが,みてが軽く,診ようが重い,のではなく,これらは各段階の経時的な流れのなかで組み合わされて解釈され一連の検査診断学として成り立っている.今回はこのような捉え方として前回とは異なり,みて,見て,診ようを区別することなくあえて混在して組み立ててみた


【検尿を“みて,見て,診よう”】

 1.蛋白尿をみたら
 検尿で蛋白尿と血尿の存在をみて調べるには一般的に試験紙法を用いている.(図1).試験紙法では尿の状態により尿蛋白が過大あるいは過小に評価されることもあるが,尿蛋白1十で300mg/日,2十で1g/日ほどの蛋白尿があると言われている.蛋白尿を認めたときは,まず生理的な蛋白尿と病的な蛋白尿を鑑別して見る必要がある.早朝と受診時の検尿の評価は必要であり,早朝起床時の尿蛋白が陰性で,受診時の尿蛋白が陽性であれば,生理的な蛋白尿の可能性がある.逆に,病的な蛋白尿が疑われれば蛋白尿がいつ頃から指摘されているかを調べる必要があり,健康診断の結果や腎疾患の家族歴の聴取さらに蛋白尿のリスクファクターとして高血圧や糖尿病さらに脂質異常や肥満そして喫煙などの有無も重要となる.尿蛋白の定量検査も必要となるが外来診療では24時間完全蓄尿について施行が困難なことも多く,その場合には簡便法として早朝尿や安静時部分尿などの検体を用いたクレアチニン補正による尿蛋白定量法が用いられることもある.
 蛋白尿に関して大切なことの一つに蛋白尿が慢性腎障害のみならず心血管病発症のリスクファクターであることである.なお,蛋白尿の陽性者では腎障害がある程度進行しない限り自覚的症状や所見に乏しいことが多いため経過を追う方法として検尿を診ることは非常に有用な検査である.
2.血尿をみたら
 血尿をみたら,蛋白尿と同様に早朝尿と受診時尿の所見に乖離がないかどうかをみて調べることが大切である.血尿が早朝尿ではみられず受診時尿でのみ認められる場合は,遊走腎や下行大動脈と上腸間膜動脈による左腎静脈圧迫(ナットクラッカー現象)などの体位性の影響も考える.逆に持続性の血尿ではlgA腎症などが考えられる.また尿沈渣で赤血球の増加がみられない場合はヘモグロビン尿やミオグロビン尿なども考慮される(表1).溶血や横紋筋融解をきたす疾患の鑑別も見ていく必要がある.さらに,血尿が糸球体性かどうかの鑑別も重要である.腎機能の増悪に関与してくるものはほとんどが糸球体性であり.赤血球円柱や変形赤血球さらに蛋白尿の存在の有無を診ることが重要である.赤血球円柱の存在そして変形赤血球は糸球体性血尿で多くみられ,糸球体性以外からの出血では赤血球に大小の不同がなく比較的に均一な赤血球を呈している(図2.3.4).蛋白尿を伴わない血尿例では超音波検査などの画像検査で尿路疾患を調べていく手順も必要である.

【超音波検査で“みて,見て,診よう”】
 これまで,超音波検査は検尿の異常から二次検査として展開されてきた.今後もその役割に変わりはないが,超音波検査そのものが腎臓・尿路への有用性が高いため画像診断の第一選択法として展開が進められていくと考える.
 正常な腎臓の超音波像は,長径が9〜12センチ,大別すると腎実質と中心部高エコー像によって構成されている.実質部は皮質が正常の肝臓とほぼ同等のエコーレベルで髄質は皮質よりやや低エコーで円錐状に描出される.中心部高エコー像は腎洞部にあたり腎盂と腎杯および脂肪結合組織と動静脈血管などにより構成され高エコー領域として描出される.
 ここでは,蛋白尿と血尿の症例にからむ超音波検査として慢性腎不全と結石および腫瘍について考えてみたい.
1.血尿と蛋白尿そして慢性腎不全
 超音波検査で慢性腎不全の変化をみて,見て,診る,ことができるだろうか.慢性糸球体腎炎や糖尿病性腎症などによって徐々に腎機能が低下した病態は,その病態の進行により腎の大きさに萎縮がみられる.超音波検査では,大きさの把握を長径の計測と皮質の萎縮を厚みの計測で観察し,皮質の変化をエコーレベルの増強で判読する.その展開のなかで皮質と中心部高エコー像との境界の不明瞭さも捉えている.ときに腎への血流測定も調べられる.慢性腎不全における変化を超音波検査でこのような,みる,見るへの変化として得ることは容易である(図5).しかし,病態の変化は一様ではなく,糖尿病性腎症では腎機能の低下のわりに当初は腎の萎縮が少なく大きさが保たれている(図6).このようなときは,超音波検査で捉える皮質の厚みやエコーレベルの変化に乏しいため判読が容易ではない(当然,病態が進行すれば変化は生じるが).腎不全によって血液透析が長期間おこなわれると,後天性の腎嚢胞ACDK(aquired cystic disease of the kidney)という腎の嚢胞性変化がみられるようになり,また腎癌の頻度も高くなることが報告されている.このような変化は病態生理の進行にあわせ,診る,という展開が組み合わされなければ超音波検査で情報を得ることが困難となる.
2.血尿と結石
 超音波検査による結石の判読は,強いエコーと音響陰影によって同定され,比較的容易である.しかし,結石があまり小さいと音響陰影が得られにくく超音波の入射角度など工夫した走査が求められる.また,結石の存在部位が腎内であれば同定が容易であるが,尿管に存在する結石では尿管の追求が消化管ガス像の影響を受けやすく困難なことが少なくない(図7.8.9).結石は様々な原因によって生じる.このため石灰化を生じるものとして腫瘍に伴い生じる石灰化,海綿腎や痛風腎にできる髄質内の石灰化,結核による乳頭部付近・全体に及んだ石灰化,脈管壁への石灰化などは,通常の腎結石と異なり判読が難易でその背景を考慮した観察と判読が求められる.
3.血尿と腫瘍
 腫瘍の発生は,腎の実質あるいは腎盂腎杯から,尿管から,膀胱からと幅広くみられ,かつ良性と悪性腫瘍がある.ここでは代表的な腎細胞癌とスクリーニング検査で見落としされやすい膀胱癌について考えてみたい.腎細胞癌をみる,すなわち発見とは腫瘍そのものを描出し観察することである.腫瘍の大きさが小さな段階では腎内にとどまるものや腎内側に発育するものもあるが,超音波検査で発見される多くの症例では腎被膜から突出して実質から外側へ発育するものが多いため,腎の輪郭の変化を捉えるように見ていくことがポイントである(図10).腫瘍を診るうえでは,そのエコーレベルが低・等・高エコーとさまざまで,小さな腫瘍では比較的均一,腫瘍が大きくなるにつれて腫瘍内に出血や壊死さらに嚢状変化が生じてくるため高低エコーの混在を呈するようにもなり,腎細胞癌では腎盂腫瘍と異なり多血腫瘍のためドプラ血流情報も得て,その病態生理が加わる判読が診るとなり展開する.
 膀胱癌は,腹部一般スクリーニング検査で膀胱の観察が十分に行われないときや膀胱に尿の貯留がないと見落とされやすい.腫瘍の多くは乳頭状で膀胱壁に接して存在し表面が不整である(図11).腫瘍の多くは血流が豊富なためドプラ検査による血流判読が情報量を増やした検査となる.検査を進めるうえで注意することは血尿症例では必ず膀胱を観察すること,前立腺の膀胱内への突出や膀胱壁の肉柱形成を誤判読しないことで,みる,見る,診るへと展開できる.
【まとめ】
 臨床検査が複雑化しているなか,もっとも身近な検尿で蛋白尿と血尿に目を向けて超音波検査とからめて考えてみた.今回は「みて,見て,診よう」を明確に分けないなかで考える展開を取り入れてみた.検尿は簡便でスクリーニング的な要素はあるものの実は奥の深い精密検査(診よう)でもある.

追記
 検尿と一言で言っても臨床検査・医学の長い歴史のなかでは簡単に述べることができないほど奥深いものがあります.今回,紙面の都合で多くの大切なことを割愛させていただいたことをお詫びいたします.

図1 試験紙法による蛋白尿と血尿の検出
表1 潜血反応と尿沈渣の乖離原因
図2 血尿の出現部位と赤血球形態
図3 非糸球体由来の均一赤血球
図4 糸球体由来の変形赤血球
図5 慢性腎不全の超音波像
図6 慢性腎不全(糖尿病性)の超音波像
図7 血尿における有痛性と無痛性
図8 腎臓結石の超音波像
図9 尿管結石の超音波像
図10 腎細胞癌の超音波像
図11 膀胱癌の超音波像

<<目次欄へ


施設紹介
東京歯科大学市川総合病院
秦  暢宏

 今回は市川市の東京歯科大学市川総合病院を訪問させていただきました.
 東京歯科大学は千葉病院,水道橋病院および市川総合病院を有しており,今回訪問した市川総合病院は21診療科,6つのセンターとベッド数570床を有し,歯科大学としては唯一の総合病院になります.特徴的としての6つのセンターには「口腔がんセンター」「糖尿病・内分泌センター」「リプロダクションセンター」「脊椎・脊髄病センター」「角膜センター」「創傷センター」があり,また,地域がん診療連携拠点病院として昨年認定され,また,救急病院としても千葉県北西部の中核病院として機能を果たしています.今回は臨床検査科だけではなく検査科のデータが関与している「角膜センター」にも訪問させていただきました.
 はじめに宮内潤検査科部長,才藤純一技師長から話を伺いました.宮内検査科部長は日本病理学会病理専門医,病理専門医研修指導医で,特に小児の病理と血液を専門とされております.先日も私の千葉病院病理学教室で診断に苦慮していた乳児の検体をお持ちし診断していただきました.また才藤技師長は千葉県臨床検査技師会の前会長で,現在,日本臨床衛生検査技師会の副会長の役に就かれています.
 市川総合病院臨床検査科は,臨床支援として検体検査(生化学・免疫血清・血液・凝固・一般・細菌),病理検査,生理検査,輸血検査の業務を行っています.血液・凝固検査を除く検体検査は三菱化学メディエンス株式会社による院内委託検査体制が導入されており,その他の部門は病院専属のスタッフで担当しています.委託検査を含めたすべての検査業務は臨床検査科部長・検査技師長による統括下で運営されており,検査受託会社と当科責任者間の運営会議および病院各科の代表者による臨床検査室運営委員会を通して,精度管理やリスクマネージメントなど検査業務全般に関わる諸問題が検討され適宜改善がなされています.
 市川総合病院は大学付属病院であることから,上記の検査業務に加え,医科系ならびに歯科系の臨床研修医,大学院生,学生,歯科衛生士などの教育・研究にも関与され,とくに病理検査科では病理学専門医の指導による組織診断や病理解剖の見学と実習,臨床病理症例検討会(CPC)などを介して若手医療従事者の人材育成にも寄与されています.

血液・凝固・輸血検査部門(採血業務含む)

 血液・凝固・輸血検査部門は専属技師3名,パート技師3名,検査事務1名で構成され,採血から血液検査,輸血検査と連携した業務を行い,個々のデータを確認することによって患者の変化を正確に,リアルタイムに報告する事に心がけられています.特に骨髄検査は日々,検査技師による勉強会を開催しレベルアップを行い全員の技師が担当できる体制を取られています.また,骨髄穿刺の形態像など血液専門医師の指導を仰ぎながら,デスカッションを行い報告されていました.輸血検査では採血の段階から,院内情報により血液検査の報告に基づいた患者の急変や,貧血,出血,また血液疾患などをいち早く知ることが可能であり緊急輸血に対応されています.このことは一連の業務の流れの中での患者情報が緊急性の対応に大切だと思いました.
 またどの施設でも同じだと思われますが,採血は400人/日で8時30分〜11時に約300人が集中し,現状では煩雑を極める時間帯は看護部からの応援をお願いする事もあります.午後になってきますと約100人程度になって来るとのことでした.

検体検査部門
 生化学検査ではBM1650・BM9030(日本電子)を用いて400件/日,血糖・HbA1cはHA8160・GA1170(アークレイ)150件/日,免疫血清はルミパルスf(富士レビオ)80件/日,尿一般はクリニテックアトラス(シーメンス)120件/日,BNPはバスファース(三菱化学メディエンス)20件/日の測定を行っています.
 緊急検査については30分以内の結果報告を心がけられていました.また,細菌検査ではシステムにバイオリンク(シスメックス)を用い,一般の同定感受性をバイテック2(シスメックス),血液培養をBACTEC(BD)を用いて行っています.現在,三菱化学メディエンスの委託検査は技師10名で構成されています.

その他
 検査科では院内でのチーム医療の一員として,糖尿病療法指導士を2名の検査技師が取得し糖尿病教室やNSTにも参加し対外的な活動も行っておられました.

生理機能検査部門
 生理機能検査部門では専属技師5名,パート技師1名,検査事務1名で構成され,心電図検査(ホルター,トレッドミル負荷心電図)をはじめ,心臓超音波検査,頸動脈超音波検査,血圧脈波(ABI/PWV)検査,肺機能検査,脳波検査,新生児聴覚スクリーニング検査,聴性脳幹反応検査(ABR),電気眼振図,心臓外科術中モニタリング検査(SEP)などの業務を行っています.運用システムはPrimeVita(日本光電)で各機器を管理し画像データを含め病院の電子カルテシステムであるMegaOak(NEC)に双方向で連結しています.ポータブルで測定を行う際にも院内LANより患者情報を引き出せるとのことです.この生理検査スステムの導入により臨床への緊急報告画像がより早くリアルタイムに送信可能になり臨床支援の一助になっています.また,システムダウン時への対応としてプリンターを用いての紙ベースでの報告の用意も怠りなく行われています.
 当院の特徴として日本睡眠学会認定施設になり,検査科では3名の睡眠学会認定検査技師の資格を取得し,耳鼻科の認定専門医と連携による終夜睡眠時無呼吸検査(PSG)を導入し当直勤務体制が取られています.これによってメタボリックの対応として患者の健康に多大に貢献しています.また,心臓超音波技師の資格を3名が取得し,循環器科からの心臓超音波検査の依頼が急増しているそうです.

病理検査部門
 病理検査部門は専属技師5名,病理専門医1名,歯科病理専門医1名,非常勤病理専門医2名で構成され,病理組織検査,細胞診検査,術中迅速組織標本作製検査,剖検などの業務を行っています.昨年から地域がん診療拠点病院になったことやまた,院内に日本で初めての「口腔がんセンター」が設置され,がん関連の患者の需要が増大し,外科(消化器,乳腺)婦人科,泌尿器科や口腔外科の生検材料や手術材料が増加しています.また,今年から地域支援として市川市と歯科開業医との連携により当病院病理が基幹施設としてThin-Prepを用い年間約1,000件の口腔がん検診を開始しています.ルチンの細胞診検体も1万件を超え3名の細胞検査士が忙しく鏡検していました.また,病理システムとしてDr.ヘルパー(JR西日本旅客鉄道株式会社)の導入により,臨床へのリアルタイムの報告はもとより,マンパワーによる煩雑な作業の軽減や特に,病理の課題でもあるリスクの高い医療安全の問題にも効果をあげています.

角膜センター
 角膜センターは1993年に市川病院眼科内に設立され,17年が経過しています.2001年には角膜センタービルが竣工し角膜移植を中心とした医学研究の拠点となっています.角膜センターは,アイバンク部門,研究部門,角膜移植関連部門から成り立っております.アイバンクは,平成7年4月に厚生大臣(当時)の許可を取得して設立され,24時間体制で移植コーディネーターを配備した,国内で唯一のアイバンクとしてスタートし,現在では,日本組織移植学会の組織移植コーディネーター教育や日本臓器移植ネットワークのコーディネーター委員会としても活動しています.平成16年,当院においてRoutine Referral System(全例臓器提供意思確認システム)を開始し,献眼数も伸びてきており,年間300例程の角膜移植を実施する,わが国最大の移植医療機関になります.
 また,アメリカアイバンク協会に所属する国内唯一の施設でFDAのGTP準拠施設です.そして,会員約400名を誇る「角膜移植患者の会」事務局としても,機能を果たしています.研究部門は,文部科学省や厚生労働省の再生医療研究拠点ともなっております.また,組織バンク認定ならびに,移植コーディネーター認定のための教育機関としても活動しており,角膜移植のみならず,組織や臓器移植に関する研究も行っています.

 角膜センターではコーディネーターの浅水さんに話を伺いました.浅水さんは臨床検査技師の資格を取られています.今回,話を伺うまで知りませんでしたが角膜は160年から180年機能すると言われており献眼の年齢制限はないとの事です.ただB型肝炎,C型肝炎,HIV,HTLV-1の感染者,ならびに敗血症,白血病,悪性リンパ腫等の疾患がある場合は行えないとの事です.また現在60歳ぐらいの方で今から約40年前のコンタクトレンズ創成期にコンタクトレンズを使用された履歴の人は,当時のコンタクトレンズは酸素の透過性を全く考慮していなかったため,角膜に傷が付いており使えない場合があるとの事です.献眼自体は60分から90分程度で行われます.献眼者の眼球を取り出し義眼を乗せ丁寧に顔を整えた後,遺族のもとに返すため外見上の変化はありません.現在日本では3,000名の方が移植待機者として登録されており,年間20,000人が移植を必要としていると推測されます.一方,約120万人の方が献眼登録をしており100人に1人の割合で登録されています.しかし,実際の献眼数は年間で900人程度であり角膜の数が足りないのに加え,故人の意思が生かされていない現状があります.アメリカでは移植登録の確認が義務化されているため国内消費量の倍の献眼が在り,余剰になった角膜は日本を含め海外に提供されています.移植の問題は欧米人と日本人では死に関する感覚が異なるので難しいかと思います.ただ,死者は己の中にしかなく,現世には決して戻りません.だから残された身体はモノと割り切り,必要とする者に生かすのが正しいのかなという気もします.2010年7月17日より法改正によって本人の遺志が確認できない際に親族の意思により移植可能になるとの事でした.

終わりに
 今回の施設紹介にあたり,お忙しい中ご協力をいただいた宮内潤検査部長,才藤純一技師長を始めスタッフの皆様,また角膜センターの皆様をはじめ移植コーディネーターの浅水さんに御礼申し上げます.また,私も同じく東京歯科大学千葉病院のスタッフですので今後ともよろしくお願い申し上げます.


病 院 正 面
宮内部長と病理医のみなさま
病理検査部門のみなさま
作業中の宜保技師
薄切中の田口技師
診断中の宮内部長
生理検査部門のみなさま
検査結果編集中
血液・輸血部門のみなさま
採血スタッフ
臨床検査室
検体検査部門のみなさま
試薬交換中…
細菌検査室のお二人
血液培養中
リプロダクションセンター
口腔ガンセンター
角膜センター・透析センター
コーディネーターのお二人
加工済みの角膜



<<目次欄へ


研究班紹介

情報システム検査研究班
班 長  秦  暢 宏

研究班紹介の連載が始まった当初から,かなり恐れていましたが遂に順番が回ってきました.今回は情報システム検査研究班の紹介の回になります.紹介文を書くにあたり,他の研究班に対して一つ羨ましい事があります.それは何を行っている研究班かが説明し易いことです.輸血検査研究班はもちろん輸血ですし,臨床化学検査研究班ならもちろん臨床化学をやっています.では情報システム検査研究班はどうでしょう?同じ理屈で言うならば情報のシステムで,しかも検査の事をやっているのでしょうが,それでは何をやっているのか全く分かりません.まぁ,なんとなくイメージとしてパソコン関係の何かをやっている研究班と言うようなイメージがあるかと思います.実際に自分もそうでした.ひょんなことから班長の命を受け研修会を企画する段階になったときに始に考えたのは・・・Excelの使い方とかかなぁ???といった感じでした.
 そのことを当時の上司に言うと「情報っていうのは何にだって関わるのだから何をやったっていい.」と言われました.その言葉に従い自分の好きなように・・・少々他県の情報研究班とは異なった研修会を行っています.中でもここ数年間拘っていたのは「コミュニケーションスキル」に関する研修会です.情報とは生物の行動に影響を与えるすべての事象です.人と人がかかわるときにも双方において情報を得て行動となります.その際にほんのちょっとしたスキルで関係を良い方向に持って行くことができます.例えばミスが生じた際の言い方でも,頭ごなしに「何をやっているんだ」と怒鳴るのと,「どうしてそうなったの?」と相手に話させるのではその後の行動,関係が変わってきます.(後者を開かれた質問と言います.)また,誰かと会話をする際には喋る内容もありますが距離,目線,頷き等の非言語の情報が重要となってきます.情報研究班の「コミュニケーションスキル」に関する研修会は毎回,動員はかなり少ないですが,参加した会員の満足度は高いと自負しています.
 あとこの先でやってみたい研修会の一つが「医療心理師」に関する研修会です.いま,心理職で国家資格となっているものはありません.その国家資格化の一つとして「医療心理師」が挙げられています.「医療心理師」は医師の指示下において心理検査,カウンセリングを行う職になります.現在,社会的認知度の高い「臨床心理士」は大学院修士課程修了者が対象となりますが「医療心理師」に関しては医学の知識+心理の知識を持つ学部課程卒業者を対象として考えられています.現在の臨床検査は身体が主体ですが心も対象とした検査技師と言うのも有かなと個人的には思っています.
 少し前のコマーシャルでこんなのが在りました.大和証券のコマーシャルで米国のニュージャージー州にあるプリンストン大学のELDAR SHAFIR博士が行動経済学を基に提唱する法則を紹介していたのですが,その法則は次の二つになります.

1.決定回避の法則
 選択肢が増えすぎると,人はむしろ何も選べなくなる.
2.現状維持の法則
選択肢が広がると,いつも通りのものを選んでしまう.

 情報システム検査研究班は何でもできる研究班なのですが,故にこのような状況に陥りやすいです.故に常に新しい考えが入ってくることが必要だと思います.今後,他の研究班との合同研修会などを通じ各研究班を繋ぐ研究班になって行けたらなと思っています.何か取りとめのない文になってしまいましたが,情報システム検査研究班は常に新しい人員を求めています.他の研究班の様な専門性はありませんが「こんなん,やってみたいな」というアイデアがあればぜひお声かけください.よろしくお願いいたします.