泌尿器 解答解説
解答: 直腸癌の膀胱浸潤
解説

(臨床経過)
2000.6 骨盤内腫瘍、血尿にて他院より紹介;紹介状より「エコーにて膀胱からS状結腸にかけて小児頭大の腫瘍あり、MRIでも同様の所見、尿細胞診にて腺癌を疑う細胞を認め、尿膜管癌の可能性も示唆された。
当院にて尿細胞診施行(今回供覧);classW 壊死および炎症性背景に高円柱状細胞からなる異型細胞集塊を認め、大腸癌(直腸・S状結腸)の浸潤が疑われる細胞像であった。
膀胱鏡施行;膀胱後壁に発赤および浮腫あり、同部生検にて中分化〜高分化管状腺癌(S状結腸癌の浸潤として矛盾しない)の診断(今回供覧)。膀胱洗浄液細胞診は出血性の炎症像で多数の細菌、結晶(シュウ酸カルシウム結晶)がみられるものの、明瞭な癌細胞は認められない。検体の性状は悪臭性、血性で、細菌検査にてEsc.coli他計6種類の細菌が検出された。
注腸造影施行;S状結腸と膀胱後壁の連続所見がみられ、S状結腸癌の膀胱浸潤と診断された。(S状結腸〜直腸;浮腫状で壁が肥厚)
2000.7 手術施行(人工肛門造設術、尿管皮膚瘻造設術、膀胱タンポナーデ止血術);大腸はS状結腸〜直腸以外は正常、腹水正常、腫瘍は膀胱以外への多臓器浸潤はなし、腫瘍は小児頭大で摘出困難であった。
2000.8御永眠された。

組織所見)
円柱状の腫瘍細胞が異型腺管を形成しながら増殖している。中分化〜高分化(管状)腺癌で、S状結腸原発腺癌の浸潤転移として矛盾しない所見であった。
(細胞所見)
出血・壊死を伴う炎症性背景に高円柱状細胞からなる異型細胞集団を認める。核は楕円形で細長く、クロマチンは増量、細胞集団は柵状配列を呈している。
以上の所見より、大腸癌(直腸・S状結腸等)の浸潤が疑われる細胞像であった。
鑑別として細胞形態より、移行上皮癌、前立腺癌は否定した。また臨床所見より、病変部が膀胱後壁ということで尿膜管癌は否定された。

(症例提示 :千葉県がんセンター 有田茂実)

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