HOME へ戻る

症例5 総 合 解 答

解答 びまん性大細胞性Bリンパ腫(Diffuse large B cell lymphoma)



HE染色
対物 40倍


免疫染色(CD20)
対物 40倍

解説

検査所見
 可溶性IL2Rc 51500 U/ml 
 LDH isozyme ( LDH1:21%, LDH2:42%, LDH3:24%, LDH4:9%, LDH5:4% )   

リンパ節生検材料によるMLA CD45ゲーティング

T cell

(%)

 

 

B cell

(%)

 

 

     その他

(%)

CD2

6.6

 

 

CD10

3.4

 

 

CD11c

95.6

CD3

7.8

 

 

CD19

90.9

 

 

CD16

10.9

CD4

5.9

 

 

CD20

94.6

 

 

CD25

91.4

CD5

99.8

 

 

CD23

1.0

 

 

CD30

3.7

CD7

6.4

 

 

K-ch

0.1

 

 

CD34

0.8

CD8

6.3

 

 

L-ch

0.3

 

 

CD56

5.4

細胞所見
 背景のリンパ球は少数で、多数の大型腫瘍細胞が上皮様に結合して出現していた。細胞質は淡く、塩基性で、細胞質内には空砲が目立った。核は類円形〜切れ込みやくびれ等の著明な核型不整もみられ、一部は明瞭な核小体を有していた。

組織所見
標本リンパ節は腫瘍細胞のびまん性増殖によって置き変わっており、正常構造は消失していた。腫瘍細胞は大型で類円形〜くびれを有する、あるいは細長くのびた核を持ち、核小体も比較的明瞭であった。核分裂像も顕著にみられた。腫瘍細胞はリンパ節以外の周囲結合組織にも及んでおり、背景の小リンパ球は異常に少なかった。免疫組織化学染色では cytokeratin( - ) EMA( - )、さらにCD20( + )CD79a( +)CD3( - )を示し、びまん性大細胞性Bリンパ腫 ( Diffuse large B cell lymphoma、以下DLBL )と診断された。なお表面マーカー解析では汎Bマーカーとともに、CD5も高値を示していた。

結語
 本症例はリンパ節生検における組織診、捺印細胞診、および同日に提出された骨髄像ともに多数の上皮様に結合する集塊が認められ転移性上皮性腫瘍との鑑別を要する所見を示した。近年、従来DLBLの範疇に分類されていた疾患の中に、形態学的に未分化な構造をとるものや、CD5が陽性を示す症例が存在すること等が報告されている1)。これらの疾患の本態については今後の研究、解明を待たなければならないが、未分化な形態をとるもの中には細胞が強い異型性を示し、一部に上皮様結合を有し、癌との鑑別を要するものが存在すること2)CD5陽性のDLBLは高齢の女性にみられ、また他と比較して極めて予後不良なことなどが指摘されている3)。本症例もDLBLとしては特異的な所見が少なからず認められた。今後これら一連の疾患群との異同について、さらなる検討を重ねて行きたいと考えている。
 悪性リンパ腫と癌との鑑別に個々の詳細な検討が大切であり、極めて教示的な症例であった。

参考文献 

1)      Jaffe, E. S., Harris, N.L., Vardiman, J. W.  Pathology and Genetics of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues. Lyon. : IARC Press, 2001: 171-174.

2)      Haralambieva, E., Pulford, KA., Lamant, L., Pileri, S., Roncador, G., Gatter, KC.,et al. Anaplastic large-cell lymphomas of B-cell phenotype are anaplastic lymphoma kinase ( ALK ) negative and belong to the spectrum of diffuse large B-cell lymphomas. ; Br J Haematol. 2000 ; 109 : 584-591.

3)      Yamaguchi, M., Seto, M., Okamoto, M., Ichinohasama, R., Nakamura, N., Yoshino, T., et al. De novo CD5+ diffuse large B-cell lymphoma : a clinicopathologic study of 109 patients. ; Blood. 2002 ; 99 : 815-821.

Copyright:(C) 2002 Chiba Association of Medical Technologists. All rights reserved.
ホームページで公開している文章や画像などの著作権は社団法人千葉県臨床衛生検査技師会に帰属します。
これらの文章や画像を社団法人千葉県臨床衛生検査技師会の承諾なしに複製、他の電子メ
ディアや印刷物などに再利用することはできません。