設問 7

社団法人千葉県臨床衛生検査技師会 一般検査研究班

46才、男性。大腸内視鏡より白い糸状のものが得られた。その糸状のまわりに矢印で示す成分が見られた、その成分を判定してください。

設問 7-1 無染色400倍

正解:鞭虫卵 Trichuris trichiura

解説: 虫卵の大きさと、両端に栓のある特徴より鞭虫卵と判定した。
鞭虫は世界中に分布し、日本では近年減少がみられるが、全国の農村部とくに日本海側に多くみられる。虫卵の大きさは長径50-54μm、短径22-23μm、黄褐色で卵殻は厚く両端に栓がある。
形はグラタン皿様、岐阜提灯様で卵内容は1個の卵細胞である。成虫は雄30-45mm雌
35-50mmで、体の3/5はきわめて細い。成虫は盲腸、虫垂に寄生する。
外界に排泄された虫卵は、適温、適湿下で幼虫包蔵卵となる、ヒトはこれを経口摂取して感染する。
少数寄生では無症状のことが多く、多数寄生すると盲腸部の炎症、下血、貧血、食欲不振などがみられる。検査は便より虫卵を検出して診断する。産卵数が少ないので、集卵法(AMSIII法、MGL法)がよい。駆虫にはメダンダゾールを用いる。

本症例は、虫体より得られたため自然排泄された虫卵と違い、未成熟で、卵殻が薄く、色調もやや薄いと思われる。

解説 7-1

内視鏡時得られた虫体
無染色40倍

虫卵の集塊
虫体の細い部分
虫体の太い部分

千臨技 一般検査研究班ホームページに『寄生虫アトラス』がありますのでご参考にして下さい。

渡邊 一博 (国保松戸市立病院)


回答集計 (参加97施設) 施設数
鞭虫卵 95 97.9
蟯虫卵 1 1.0
フィリピン毛細虫卵 1 1.0



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