同定問題・標本評価問題 解答

解答
解説
2
萎縮性膣炎
 好中球を主体とした炎症性背景に、傍基底型の扁平上皮細胞を認める。核濃縮・核の消失した細胞質のみのもの・オレンジG好性を示す錯角化など炎症性変化がみられる。年齢を加味し萎縮性膣炎と判定出来る。
 
 【鑑別】
トリコモナスは内部に好酸性の顆粒と核を有する(時に変性した白血球・扁平上皮細胞・背景の粘液様物質と鑑別困難な場合がある)。軽度異形成は表層から中層型の核異常(異型)細胞の出現、上皮内癌はN/Cの大きな傍基底型悪性細胞が主体を占め、扁平上皮癌(角化型)では壊死物質を背景に多彩な角化異常細胞(悪性細胞)を認めることから鑑別可能である。
4
HSIL
 傍基底型扁平上皮細胞に核腫大、N/Cが高く、核形不整でクロマチンの粗顆粒状の増量がみられる核異常細胞である。高度異形成相当の細胞であり、ベセスダ分類ではHSILと判定できる。

 【鑑別】
明らかな核異型を伴う細胞であることからASC-USは否定される。また本症例は傍基底型の細胞質であり、表層型の細胞質をもつと定義されるLSILとも鑑別できる。
2
扁平上皮癌
 流れ状の重積性集塊を形成する異型細胞である。弱拡大画像にごく少数の角化物を認める。核の大小不同、核腫大と核クロマチンの粗顆粒状の増量、核濃染傾向を示すなどから、扁平上皮癌と判定できる。

 【鑑別】
核異型を伴うやや大型の癌細胞であり、腺癌を示唆する乳頭状や管状の集塊、粘液等は認めない。他の選択肢も細胞の大きさN/C、核異型、線毛の有無等で鑑別可能である。
5
粘液癌
 背景に粘液成分を認め、粘液に浮くように細胞集塊がみられる。これらは小型でN/Cが高く核形不整を示す細胞である。異型に乏しい細胞集塊ではあるが、出現形態、背景の粘液成分から粘液癌と判定できる。

 【鑑別】
粘液の有無、出現様式、細胞の配列などから他の選択肢との鑑別は可能である。
2
髄様癌
 背景にライトグリーン好性のアミロイドがみられる。腫瘍細胞の結合性は疎で、類円形核、顆粒状のクロマチン、突起を有する細胞質をもつ。以上の所見から髄様癌と判定できる。

 【鑑別】
本症例が疎な結合を示すことから、非ホジキンリンパ腫、未分化癌との鑑別があげられる。未分化癌も結合性の低下を示し散在性に出現することが多いが、細胞像は多形性が強く、紡錘形細胞や多辺形細胞、巨細胞など異型の強い細胞像を示すことから鑑別可能である。非ホジキンリンパ腫は細胞質に乏しく、核クロマチン増量や核小体の出現、核形不整などの核異型が強い。本症例は核異型に乏しく突起状の細胞質を持つことから鑑別可能である。
3
腺癌
 炎症性背景に平面的集塊の円柱上皮細胞と不規則重積を示す細胞集塊がみられる。重積を示す細胞は、配列の乱れと結合性の低下を認める。細胞質は淡く、核腫大、核縁の肥厚、明瞭な核小体がみられることから腺癌と判定できる。

 【鑑別】
出現様式、細胞の配列、細胞所見から、他の選択肢との鑑別は可能である。
1
反応性中皮細胞
 核中心性の立方形の細胞で、核周囲の細胞質は厚く、細胞質辺縁は淡いことから中皮細胞の性質を有する細胞である。類円形核で核縁は薄く、小型の核小体がみられるがクロマチンの増量などは認めない。以上の所見から反応性中皮細胞と判定できる。

 【鑑別】
腺癌は球状集塊として出現することが多いが、低分化腺癌など散在性に出現する場合、核偏在傾向を示し、細胞質は淡く、核腫大・核縁の肥厚・明瞭な核小体などの所見を呈する。扁平上皮癌は散在性に出現することが多く、核は腫大しクロマチンは粗顆粒状に増量、細胞質は厚く、ときに層状構造がみられる。悪性中皮腫はマリモ状や乳頭状集塊、多核化した異型中皮細胞がみられる。以上の所見から鑑別可能であると考える。
5
 骨巨細胞腫
 短紡錘形または多辺形を示す単核細胞と数個~数十個の核を有する多核巨細胞が混在してみられ、両者の間に移行像を認める。各々の細胞は類円形または楕円形の核を有し、核の大小不同や核形不整、クロマチン増量などの核異型は軽度で、小型の核小体を有する。

 【鑑別】
鑑別を要する選択肢としては、骨肉腫が挙げられる。骨肉腫では発生年齢が40歳以上というのは稀であること、また、細胞診では多核の破骨細胞や類骨と伴に異型性または多形性の目立つ腫瘍細胞がみられるということが鑑別点となる。
3
核染色後の
分別過少
 背景及び細胞全体にヘマトキシリンの色素が被ってしまっている。
核は濃染し、一様に染まり、クロマチンパターンも認識出来ない。
核染色後の分別不良である。
原因としては、分別液塩酸濃度の低下・浸漬時間の短さ・浸漬温度の低下などが考えられる。適正を確認するには、分別後、好中球の核質が抜けてみえることを目安とするとよい。
6
染色水洗後の
乾燥不良
 標本の中心から左半分が赤紫、右半分が紫~青紫に染まっており、また背景についても左半分はやや薄紫傾向を示している。左半分はギムザ染色の洗浄・分別後、乾燥操作が遅く、水分が残り脱色され、染色ムラを生じたと考えられる。
洗浄・分別後は、余分な水分を濾紙等で吸い取り、急速に乾燥させることが望ましい。

トップページヘ