設問 6

社団法人千葉県臨床衛生検査技師会 一般検査研究班

55歳、女性  乳癌にて抗癌剤施行中の患者尿です。
尿沈渣中の矢印で示す細胞成分について判定して下さい。
尿定性検査:pH 6.5 比重1.030< 蛋白(2+) 糖(−) 潜血(±)

設問 6-1 無染色400倍

設問 6-2 無染色400倍

設問 6-3 Sternheimer400倍

正解:尿細管上皮細胞 (抗癌剤による尿細管障害)

解説:設問 6-1:無染色  ほとんどの細胞が、N/C比80%以下で、核は類円形、核縁は薄く、核小体肥大は軽度、細胞質にはリポフスチン顆粒が認められる尿細管上皮細胞の集団である。
設問 6-2:無染色  上皮円柱である。細胞質が空胞変性に陥った尿細管上皮細胞が2個見られる。(矢印)他の尿細管上皮細胞は集塊状となり、個々の細胞の区別がはっきりしない。
設問 6-3: S染色  スライド2と同様の上皮円柱で、円形の尿細管上皮細胞が集塊を形成している。N/C比大、小さい核小体が見られるものもあるが、クロマチンの増量は、見られない。

抗癌剤に伴う尿細管障害により出現した尿細管上皮細胞である。ときに大きな細胞集塊として見られ、異型細胞との鑑別が必要となる。N/C比は小〜大のものまで見られるが、クロマチンの増量が軽度であること、核のクロマチンパターンが均一であることが鑑別のポイントとなる。また、リポフスチン顆粒や塩類・結晶を伴って出現することも多く、同時に多彩な形態を呈する特殊型尿細管上皮細胞の出現も認められることがある。

リポフスチン顆粒とは

田中 雅美 (成田赤十字病院)


回答集計 (参加97施設) 施設数
尿細管上皮細胞 32 33.0
異型細胞(含:悪性細胞) 48 49.0
腺癌細胞 5 5.2
移行上皮癌細胞 2 2.1
移行上皮細胞 2 2.1
再生移行上皮細胞 2 2.1
円柱上皮細胞 1 1.0
良性異型細胞 1 1.0
その他 4 4.2


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